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短編【考える葦】小説

『人間は考える葦である』と言ったのはパスカルだが、私に言わせれば、ん?パステルではない!パスカルだ。パスカルも知らないのか。君はこの仕事を軽んじているのか?一人前になりたければ勉強をしなさい。どこまで話した?そうそう『人間は考える葦である』だ。だが私に言わせれば多くの人間は『考えない葦』なのだよ。いいか、我々詐欺師の最初の仕事はこの『考えない葦』を探す事なのだ。その足じゃない!葦と言うのはイネ科の植物のことで…まぁいい。教養の無い者に時間を割くほど、私は暇では無い。どこまで話した?そうそう、我々詐欺師が初めに取り掛かる仕事は『考えない葦』を探す事だ。人間は当たり前の事については意味を考えず、分析もせず、無意識の内に行動している。白衣の医者が腹を見せろ、と言えば何の疑いも持たずに、腹をさらけ出すし、トイレに清掃中の看板が立っていれば疑問も持たずに中には入らない。当たり前の事は考えない。日常生活で人間は『考えない葦』として生活しているのだ。だが、我々詐欺師は違う。常に時代を読み、考え続けている。『考える葦』たる我々が『考えない葦』共の金品を貰い受けるのは当然の事なのだ。オレオレ詐欺を世界で一番最初にやったのは、この私だ。ネズミ講を最初にやったのも、勿論私だ。だが私は一度も捕まった事はない。何故だか解るかね。それは誰も思いつかなった詐欺を世界で最初にやったからだ。誰も思い付かないのだから防ぎようが無い。そして世間が警戒し始めたら、さっさと身を引く。捕まるのは、いつも後から真似した詐欺師ばかりだ。私に言わせればこいつらも『考えない葦』なのさ。私も、もう年で詐欺の世界から引退したのだが、この通り頭ははっきりしていてね。次から次へと詐欺の手口を思い付くんだよ。つい先日もツイッターと電子マネーを使った画期的な詐欺を思い付いてね。この手口は防ぎようが無い。何故ならばまだ誰も警戒していないからね。今なら幾らでも儲ける事が出来る。ん?ああ、幾らでもだ!ほほう、やってみたいのかね?ほぉう『考える葦』になりたいのか?なにせ、ツイッターを使った詐欺だ。ターゲットは全世界に及ぶ。まだ、世界中で誰もやった事の無い手口だからね。死ぬほど儲ける事ができる。…まぁ、二百万ほどあれば手口を教えてやらんでも無いが。

準備出来るかね?


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