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竹細工専門学校に入学して。

僕が竹細工専門学校に入学したのは、高校を卒業した18才の時でした。実家の福岡を離れ、別府へ。職人への道を一歩踏み出した瞬間でした。

最初の課題は、竹の箸を切出し小刀で削って作るというものでした。まず最初に先生がお手本で箸を削って見せてくれました。シュー、シューとキレイに竹が削れていく「うわぁ〜見事だなぁ〜」と、その腕前に只々驚くばかりでした。

「さぁーそれでは皆さん箸を削ってみてください。皆さんの切出し小刀は、去年の先輩たちが研いでいますので、よく切れるはずです」

さっそく僕も竹を削ってみました。「ん?上手く削れない。何故だ?竹に当たる小刀が重く全然切れない。先生は先輩たちが研いでいるので切れるはずと言ってたし」周りを見渡すと、みんな結構、竹を削れている。僕は慌てた。「なぜだ?切出し小刀なら子供の時から使い慣れているのに」「竹細工で使う竹は硬いのかな?」

結局その日は、箸を上手に削ることが出来ず肩を落して家に帰りました。家に帰ってから暫くすると実家の母から電話がありました。「竹の学校初日どうだった?」「うん、僕がクラスの中で一番下手みたいだよ。だめかもしれない」「なに言ってるのよ。そんなはずないでしょ」母に今日の一日の出来事を話しました。母は「その切出し小刀、本当に切れるの?」「そうか、先輩が研いでいるといっても切れるとは限らないよね」

次の日、学校に着いて、すぐに先生に「あの~切出し小刀を研いでもいいですか?」と聞いてみました。先生は「良いけど研ぎ方知ってるの?」「はい、切出し小刀は小学生の頃から研いでましたので大丈夫です」僕は、さっそく切出し小刀を研いでみました。「よし、今度は削れるぞ」水に浸けた竹を削ってみた「やった!削れる!」昨日かなり落ち込んでいたので、ほっとした気持ちになりました。この日、箸を10善位だったかな?完成させて提出しました。後日持って帰って良いとのことで、休みの日に実家に持って帰って両親にプレゼントしました。「結構、上手に出来てるじゃない」と褒めてくれました。

初めての竹割り

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次の日、六つ目編みの籠を作る事になりました。先生が皆の前で竹割り包丁という刀みたいな道具で竹を割って見せてくれました。

パカーン!と音をたてて竹は2つに割れました。「うわぁ〜カッコイイなぁ〜」と見ていると先生は「さぁー皆さん、割ってみてください」 ええ〜!いきなりこれやるの?

出来るのかな〜?とやってみると竹割り包丁が竹に食い込んで、びくとも動かない。

悪戦苦闘していると先生が来て「ハッハッハかしてごらん」と言われ、すぐさまパカーン!と凄い音で割ってくれました。「すげ〜」唖然と見ている僕の肩をポンと叩いて「そのうち出来るようになるよ」と言ってくれました。竹を割ったような性格とよくいいますが、竹は簡単には割れないんだなと思いました。

初めての竹籠完成

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そして、竹割り、幅取り、面取り、センがけというたくさんの工程を経て、一本の竹ヒゴが出来ることに感動しながら、編み、籐巻きと作業は進み、ついに六つ目編みの竹籠が完成しました。こんなに手間暇かけて作るんだと感動しました。

職人への道は、まだまだ始まったばかりでしたが、なんだか職人になれたような気分でした。

当時の竹細工専門学校では生徒の年齢層は、18〜60歳(現在は年齢制限があり39才まで)までと幅広かったです。最初は、僕は本当に竹籠を作れるようになるのかな?と不安になりましたが、先生の言うとおりに習えば、竹籠は作れました。上手い下手はありますが、ほとんどの人は竹籠を1から作れるようになります。

ただし、プロの職人なれるかは、その人の努力と才能次第です。どれだけ、その工芸品が好きかも大切です。それと学校を卒業した後、誰にも習うかが重要です。この事は、またいつかお話したいと思います。





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