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自叙架空#135



その日私は哲学者のニーチェの自宅に招かれていた


 
 
ニーチェはその風貌や職業上の言動から、性格が暗く気難しい奴だと思われがちだが、実際私生活では気さくで人付き合いも良く、この日も私を自宅に呼んでニーチェ自身が料理したランチを振る舞ってくれ、さらに食後には、甘くて冷たくてプルプルして美味しいデザートがあると、その場で調理用のボウルに牛乳と色のついた液体を入れて混ぜ合わせ、出来上がった物をガラスの容器に取り分けてくれた


 
 
私はこのデザートの名前を知っていたのだが、あえて「これ美味しそうだけど何て食べ物?」と訊き、どきどきしながらあの商品名を言うのを待っていると、ニーチェは少し考えた後、そこだけなぜかそっけない口調で、「知らん」と言った


      
       
     コウ

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