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自叙架空#143



私が教員として勤める大学の教頭は、アメリカから期間限定で赴任してきたクラーク博士だ


 

クラーク博士は、優秀で高名で人格者なのだが少し変わり者で、その日初めて顔を合わせた人には誰にでも「ショウネンヨタイシヲイダケ」と言って笑顔を見せ、学食でランチをとる時は手を合わせて「ショウネンヨタイシヲイダケ」と言ってから食事を始め、温泉に肩まで浸かって気持ち良くなったひと言めには必ず「ショウネンヨタイシヲイダケ」と言う


 

一年の赴任期間が終了して博士が帰国する当日、私や生徒達が見送りに博士の元に集まると、博士が「最後にひと言いいたい」といったので、私は『ここがあの言葉を使う正式な場面だぞ』と思いながら期待して見守っていたのだが、感極まった博士は「色々お世話になりました。皆さんいつまでもお元気で」と普通の事だけを言い残して大学を去っていった


    コウ

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