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自叙架空#120


 
ジョエルとアイリッシュとザ・キッドとケンの四人で五十メートル走を走ることになった


 
 
私はそのレースの審判員としてゴール付近に立っていて、スタート地点では、ジョエルとアイリッシュが音楽家らしくちょっとすかした感じでアキレス腱を伸ばし、ザ・キッドは伝説のガンマンらしく腰に銃を差してクールに煙草を吸い、幸運の神で金色に光るケンは自身の尖った頭頂部をさすりながらニコニコ笑っていて、みな特に気負っている様子はなかったのだが、位置に着き、スタートの号砲が鳴ると、四人は同時にもの凄い勢いで走りだした


 
 
 
どうやら四人共負けたくないらしく、必死の形相で走っていて、ほぼ横一線の状態で徐々にこちらに近づいてきたので、私はもう一人の審判員とゴールテープを張り、ゴールラインの両サイドに立つと、タイムや順位には一切着目せず、このレースのビリはいったい誰なのか、ただそれだけを見定めるために眼を凝らして結果を見守った

 


    コウ

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