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自叙架空#133


 
うちの診療所に運ばれてきた時にはすでに患者は虫の息だった


 
 
患者は女性で付き添いに旦那がいて、その旦那が「妻を治せるのはもう先生しかいません。先生が医師の免許を持っていないのも、手術費が法外なのも承知です。三千万でも五千万でもお支払いするので、なんとか妻を助けて下さい」と私に言ったので、私は「それは漫画が連載されていた当時の料金で、今の令和の時代に換算するとこの患者の手術代は二十億円になる」と言った


 
 
二十億なんてとても払えない、とその場は一旦保留とし、その後一悶着があり、後日私が執刀した手術で患者は無事一命を取り留めたものの、旦那の自分の全てを懸けた妻への愛情に私はほだされ、手術料の二十億を二十円にまけてやることにすると、一連の流れを側で見ていた、助手であり妻でもある私の一人娘が、両手で頬を挟んで口をすぼめながら、私に向かって例の決めゼリフを言った


 
     
     コウ

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