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ここに幸あり

 フレンチパラドックスという、有名な統計がある。
 フランス人は、相対的に喫煙率が高く、栄養学的に一番体に悪いとされる、バター、アルコール、塩を世界一多く摂取しているにもかかわらず、アメリカ人よりも平均寿命が長く、心臓病も少ないというパラドックスだ。もし本当にそうならば、生きていく上で、とても幸せなことのように思う。

 オタール・イオセリアーニ監督が撮った映画、「ここに幸あり」を観た。
 フランスのパリ。主人公は職を失い、お金も、住む家もなくなってしまう。
 しかたなく昔住んでいた場所に着の身着のまま帰り、そこで、懐かしい知り合いたちと再会し、一緒に酒を飲み、歌を歌い、女性たちと出会い、癒されていく。思いがけず訪れた人生の休暇で、主人公は、生きていく厳しさの中に、ささやかな喜びや幸せを見出していく。
 映画は、全編にわたって、フレンチパラドックスの秘密を淡々と見せてくれる。

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