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外道クライマー

 坂道が苦手だ。 
 下りの方が、自分の体重をもろに受けとめるので、そのぶん辛いと聞いたことがあるが、俺は上りの方が疲れるとおもう。
 なので、渋谷駅のハチ公口から東京メトロ銀座線に乗るときに、三階まで階段を上らされるのが億劫でならない。メトロの名を返上してほしいと、一段一段踏みしめながら、心の中で呟かずにはいられない。
 
 宮城公博著『外道クライマー』は、そんな俺からしたら卒倒してしまいそうな内容の本だ。
 まず手始めに第一章で、著者と仲間が、警察に逮捕されるところから話がはじまる。
 日本一の落差を誇る、那智の滝の岩壁を登り、軽犯罪法違反で捕まるのだ。これが原因で、会社はクビになってしまう。
 しかし、これはまだまだ序の口だということを、読者は読み進めていくうちに知ることとなる。

 彼らは、自分達のことを「沢ヤ」と呼ぶ。
 沢登りに異常なこだわりをもった、偏屈な社会不適合者だけが、「沢ヤ」の称号を得られるのだそうだ。

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