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憶えづらい「ポメラ」

#開封の儀 #ポメラ

 グランゼコールとは、フランス独自の高等専門教育機関であり、そこを目指す若者は、「太陽を見ることがない」と言われるぐらいに、一日中勉強をする。そのなかでも、特に名門とされるグランゼコールには、本当に優秀な人しか入ることができない。フランスの人々は、そこの生徒たちのことを、こう言っているそうだ。「あそこの生徒は、すべてのことを知っている。しかし、それ以外のことは何も知らない。」
 知識とは、確かに力であり、物事の丸暗記は、現生を鷲掴みにする行為に似ている。
 ニーチェは「ツァラトゥストラ」のなかで、「血と寸鉄の言で書く者は、読まれることを欲しない。そらんじられることを欲する。」と書いている。
 要は、ただ読むだけではなく、その文章を暗記しなければ、あまり意味はないのだそうだ。
 もっとも、何かを憶えるためには、まず大前提として、それについて興味がなければならない。
 ひとえに、好奇心と感受性なのだとおもう。
 ただ、俺の場合、あふれんばかりに興味津々なのにもかかわらず、なかなか憶えることができないものが多々あると正直に言えば、あなたは笑うだろうか。それとも、やさしく微笑みかけてくれるだろうか。
 同情なんざ、いらないぜ。

 タイ語で、「父親」をポー(พ่อ)、「母親」をメー(แม่)という。カタカナで書くと、ポー、メーとなってしまうが、実際の発音は若干異なる。しかし、その説明を始めると、長くなってしまうのでここでは省略する。
 ラッ(ล่ะ)というのがあり、これを文末につけると、疑問などを表す強調詞になる。
 なので、ポーメーラッ(พ่อแม่ล่ะ)で、「お父さんとお母さんは?」というような意味になる。
 「お父さんとお母さんは?」で憶えることにした。
 ポメラのことである。
 たった三文字なのだが、これがなかなか憶えられず、あれは何という名だったかと、いつも思い出すのに一苦労していた。
 グーグルで検索をしたら、ポメラニアンの画像がたくさん出てきて、この犬に関連づけて憶えようとしたのだが、駄目だった。思い出すきっかけの、ポメラニアンが出てこないのだ。
 説明書によると、ポメラという製品名は、「ポケット・メモ・ライター」の頭文字なのだそうだ。
 ああ、そうかい。そうだろうよ。
 しかし、俺からしたら、「お父さんとお母さんは?」の頭文字なのさ。

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