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Lonesome Traveler

68
孤独な旅人
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2015年6月の記事一覧

あなたの趣味は、何ですか?

あなたの趣味は、何ですか?

 趣味で、タイ語をやっている。
 まあ、おもしろいし、やってて良かったなとはおもう。
 勉強というほどのものでもない。ただ、気ままな時間つぶし、といったところか。
 語順は、英語と同じで、SVOCだ。SVOCとは何かって?そんなことも知らん奴は、顔を洗って出直してこい。
 人生で一番大事なものは、時間であることに疑いの余地はない。その貴重な時間を費やしてまで、俺の文章を読んでいるあなたとは、いつか

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昨日の夕焼け

昨日の夕焼け

 きれいな夕焼けだな。
 おもわず、つぶやいた。
 バスの窓ガラスに向かって、いや、正確には、そこに映る、自分の顔に向かって。
 この感慨を、誰かと共有したくてまわりを見渡してみたのだが、皆、一様にスマートフォンに見入っていた。
 オレンジ色に染まった空よりも、ブルーライトが溢れる四角い空間の方が重要らしい。むずかしい顔で、端末を睨んでいる。
 しかたなく、俺は夕焼け空を独り占めにした。
 
 い

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WORLD PRESS PHOTO 15

WORLD PRESS PHOTO 15

 久々に、池袋に来た。
 予報では、午前中には雨があがるようだったので、東京芸術劇場で今日からやっている、世界報道写真展を見に来たのだ。
 2014年度入賞作の写真も、容赦なく、暴力と、悲しみ、苦しみをとらえている。
 胸に、鋭利な刃物を突き立てられるような写真の数々だ。それらが、等間隔に並べられ、見る者の体の奥深くに、強烈な印象を焼きつける。
 圧縮された空間のその中で、いくらかでも息をついて見

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歩道について

歩道について

 歩いていた。
 よく晴れた昼下がりに、皇居周辺の、歩道をである。
 なんなんだ、あの、馬鹿の一つ覚えのごとく、皇居のまわりをぐるぐると走る輩は。
 邪魔でしょうがない。まだ、一人二人なら我慢もできる。あれではまるで、蟻の大群だろうが。歩くこともままならん。
 俺は確かに聞いたぞ。歩行者の俺に対する、舌打ちを。おもわず振り返ったら、そいつはもう遥か彼方だった。
 その舌打ちで、国立近代美術館で見て

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空中ブランコ

空中ブランコ

 ある同じ夢を、たまに見る。
 3歳、いや、4歳ぐらいか、とにかく、ずっと幼かったころに、サーカスを見に行った記憶が、かすかにある。
 大きなテント、象、熊、玉乗りをするピエロなどを、それこそ目を皿のようにして見ていたと思う。
 最後の演目は、空中ブランコであったか。次々と華麗な技を繰り出していたのだが、途中で、回転しながら飛び移るのに失敗し、下に落ちてしまった。ブランコ乗りは、下のピンと張られた

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チャンドラ

チャンドラ

 チャンドラという、インドカレー屋が新しくオープンしていたので、入ってみた。

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梅雨時の記憶

梅雨時の記憶

 外は、雨が降っている。
 関東はこれからが梅雨本番だが、沖縄では梅雨明けだそうだ。
 あれは、梅雨入りごろのことだったか、しとしとと雨が降る中を、まだ二十歳だった俺は、傘もささずに歩いていた。雨に濡れたい気分だったし、そもそも、傘などというものを持っていなかった。
 そのころは、今から考えると、滑稽なほどに傍若無人な日々を過ごしていた。
 若かった。たくさんの人を傷つけた。そして、自分も傷ついた

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キャベツ焼き

キャベツ焼き

 陽射しが、空に浮かぶ雲を、眩しく輝かせている。
 外を歩くと若干汗ばむが、時折吹く初夏の風が、通りを行き交う人々を、優しくなでている。

 キャベツ焼きという食べ物が、大阪にある。それを売る店舗が、江東区の北砂にもあるというので、電車に揺られてこの町に来た。

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