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空中ブランコ

 ある同じ夢を、たまに見る。
 3歳、いや、4歳ぐらいか、とにかく、ずっと幼かったころに、サーカスを見に行った記憶が、かすかにある。
 大きなテント、象、熊、玉乗りをするピエロなどを、それこそ目を皿のようにして見ていたと思う。
 最後の演目は、空中ブランコであったか。次々と華麗な技を繰り出していたのだが、途中で、回転しながら飛び移るのに失敗し、下に落ちてしまった。ブランコ乗りは、下のピンと張られたネットの上に転がると、すぐに立ち上がって背すじを伸ばし、片手を高々と上げ、客席に向かって満面の笑みをふりまいた。観衆は彼に拍手を送ったのだが、俺にはそれがえらく不満だった。
 なぜ失敗したのに笑顔なのか、そして観衆はそれに対して拍手をするのか。
 幼い俺は、その光景を不思議に眺めていた。
 今でもたまに、この時のことを夢で見る。
 ただ、この夢を何度も見るうちに、いつのころからか、ある疑惑が湧くようになった。
 はたして、この記憶は正確なものなのか、ひょっとしたら、こんな体験は実は無くて、俺の脳が作り出した、まったくのフィクションなのではなかろうか。
 
 今日見た夢が、この夢だった。
 起きると、首が痛くてたまらなかった。
 空中ブランコから落ちたのは、実は俺だったのか、それとも、ただ単に、寝違えただけなのか。

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