お箸ください!!
「すいません、お箸ください!!」
昔に、
いわゆるレセプションパーティに参加したことがある。
私は煌びやかな場が苦手だし、
そのような場で誰と何の話をしたらいいか、
それすらもわからない。笑
そして、出てくる料理が、
これまた完全なフレンチのフルコース(苦笑)
マナー以前に、
ナイフ?フォーク?の問答すらし始める始末。
そんな場で、
私の隣の席がフレンチのシェフだった話。
慣れない場と料理に耐えきれず、
精一杯のコミュニケーションを図ろうと、
シェフに話かける。
「すいません、この料理はどうやって食べればよいですか?」
その後のシェフの言葉がこんな感じ。
◯◯さん(私の名前)、
色々な考え方があるから、
一つの思いとして聞いて欲しいけど。
私はカタチ上、フレンチのシェフだけど、
フレンチを食べて欲しいというより、
「おいしい料理を食べて欲しい」と思って
料理を作っている。
だから、確かにマナーやルールはあるけど、
それに囚われ過ぎて料理を楽しめないというのは、私がシェフである意味がないと思う。
◯◯さんはお箸はどう?(得意?)
私「ナイフよりは得意です...」
よしわかった。
そう言ってシェフが大きな声で言うわけです。
「すいません、お箸ください!!」
周り含め、
私も口がポカーンとしてたこと。
そしてさらに、
シェフが頼んだお箸は「2膳」。
私用とシェフ用。
「いや、実は私も(ナイフが)苦手でね。」
それは今思えば私を気遣っての事だったかもしれない。
社会人になって間もなかったから、
こんな考え方の人もこの世の中には居るんだ、
と驚いたことだった。
色んな思いの人が居て、
色々な楽しみ方がそれぞれあるという事。
「絶対」なんてものは実は自分で決めている事があること。
この一件以降、私は(お店に)お箸があれば、
恥じる事なくフレンチでもイタリアンでもお箸で食べるようにしているし、
なにかをするときにも、
変な先入観や固定観念に囚われていないか、
問答するようになった。
「なにが大切なのか」
「自分が大切にしたいものはなんなのか」
「自分がなにを好きなのか」
絶対フルサイズ機じゃないと、とか
ポートレートなら85mm、とか
昼間はISOを低く、とか
それは誰の為何の為なんだろう
アドバイスなのかセオリーなのか
なにかにすがりたい時に
必要以上のものを得てしまっていないだろうか
シェフの言葉が形を変えて響いてくる。
もうどんな料理だったかは忘れてしまったけど
きっと、
2人でお箸で食べたフレンチは楽しかった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?