一年目の冥王星

最近行った主催ライブでエレパレを蒸し返そうというコーナーがあって、そこでひとつ思い出したことがある。

エレパレというのは、東京NSC17期生の中で0年目の養成所時代に突如生まれた青春アゲアゲ集団のことで、詳しくはニューヨークさんのYoutubeチャンネルで『ザ・エレクトリカルパレーズ』という動画で紹介されている。

僕もなんやかんやあって当時エレパレに入っていた。動画を観た方は分かると思うが、当時の元相方がそこで証言していた通り、僕らは本来クラスの隅っこで静かにひっそりと観葉植物かのように生きてきたタイプなので、流れでエレパレに入った時には二人そろって頭を抱えたのを覚えている。とはいえ、二人とも断れるような気概もなく、流れに身をまかせるまま自分達の名前が入ったTシャツをへらへらと受け取った。黄色と白だった。

エレパレメンバーは基本的に明るいカラッとした良いやつが多いので、雰囲気に馴染めない僕らをすごく良くしてくれたのだが、いまいち心を開けず、めちゃくちゃ失礼な話、飲み会やネタ見せ会で「早いとこ時間過ぎないかな」とバイト中みたいなことをずっと思っていた。実際にそれらを断るためにめちゃくちゃバイトも入れてた。15連勤とか平気でしてた。
かといって、他の同期とも持ち前のコミュ障をいかんなく発揮し仲良くなれず、しかもこんなコミュ障がなぜエレパレに?と周りからより不気味がられ、勝手にこれが俗にいう四面楚歌なのかと感じていた。

実際は全くそんなことないのだが、当時の僕らにとってはそのどうしようもなく小さい、四畳半みたいな世界が全てだったのだ。いつかこの四畳半から抜け出した時には、本当に気が合う同期と一緒に仲良くよろしくやりたいと考えていた。


晴れてNSCを卒業し、一年目となった僕は気になる同期に声をかけてちょくちょく大喜利会を主催するようになった。その頃は大喜利が面白い芸人が一番かっこええやんと偏った考えをしていたのと、ライブなどで同期と絡む機会も増えていくらか話しやすくなったので、腰の重い僕にしては活発的に動いていた。

何回かやるにつれ、どうせやるなら配信して観てもらおうという流れになり、あれよあれよと話はまとまり、隔週で集まって一時間ほどツイキャスで大喜利配信をすることとなった。17期生大喜利配信じゃ味気ないから名前を付けようとなり、何でそうなったかは覚えてないが、その配信は『大喜利冥王星』と名付けられた。

大喜利冥王星は僕にとってすごく居心地の良い場所となった。自分の好きな同期に出てもらってるのだからそりゃ当然だ。大喜利冥王星は僕の芸人生活での大きなモチベーションとなり、そこで周りにウケることが何より嬉しかった。そのメンバーで大喜利をしたあと、皆で飲みに行くのがたまらなく好きだった。ようやく僕は自分にとっての場所を見つけたのだと思った。


もうお分かりでしょう?そうです。そうなんです。要はやってること、エレパレとほぼ一緒なんですよね、これ。チーム名付けちゃってるし、ネタ見せ会が大喜利会になってるだけだし、何なら飲み会とかやっちゃってたし。
大喜利冥王星に出てくれてた他の同期は全くそんなつもりじゃなかっただろうけど、僕が結局求めてたものって本質まったく同じじゃんって。あんなに内心嫌がってたのに、自分も全く同じことしてるじゃんって。

当時は全然気付かなくて、最近になってようやく気がついた。当時のエレパレが肌に合わなかったとしても、やんややんやと今さら言う権利なんて僕には一つも無いのだ。


今年で10年目。エレパレは今でもお笑い続けてるメンバーが多いが、大喜利冥王星に出てくれた同期はほぼ辞めていなくなってしまった。そのうちの何人かは今でもしょっちゅう遊ぶくらい仲が良いのだけど、ほとんどのメンバーとは会ってないし連絡もとってはいない。
そういえば冥王星って何年も前に惑星の分類から外されて、昔学校で習った惑星の覚え方、「水金地火木土天海冥」から「冥」はいなくなったらしい。一人でもいなくならないように、『大喜利海王星』とかにすれば良かった。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?