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あなたは何を売りますか?

『日本酒を飲むんじゃなくて、時間を飲んでもらうんだよ。』

そう言いながらガハハと笑う燗酒BarGatsのマサさん。豪快な見た目と人柄の奥には、繊細な技術と細やかな気配りがある。

そんなマサさんの店に来るのは2回目。最初の衝撃から僅か11日、また来たく、そして誰かを連れて来たくなるそんな場所へ、Twitterでしか関わりのなかったお二人と行く事に。

2人ともフォローはしていたけれど、連絡を取ったことは無かった。けれど、何故か親近感はあったし仲良くなれそうな気もしていたので、このタイミングで一緒に食事に行けたのは本当に良かった。

『燗酒』

熱燗といった方が分かりやすいかもしれない。日本酒を温めて飲むものだ。世の中に沢山のお酒はあるけれど、温めて飲むものはそんなに多くない。ましてや、そこに技術が存在するものとなると日本酒だけかもしれない。そんな燗酒の世界を僕は最近初めて知った。

何故日本酒は温めるのか、温められるのか?

日本酒は製造の工程で火入れが存在する。酵素の働きを止めアルコール発酵をそれ以上進めないようにし、品質を安定させる為だ。その加熱温度によっても味わいが変化する。そして一度加熱の行程を経ている日本酒は加熱への耐性があり、他のアルコールにはない高い温度帯での味わいの変化を楽しむことができる。そしてその温度変化は料理でいう所の調理と同じだ。

だからマサさんは日本酒を素材と捉え、加熱による調理とブレンドによる味わいの変化を操る料理人なのだ。そしてその変化は味ではなく香りで判断するという。香りを重視してきた僕には本当に多くの感じることがあり、より日本酒というものの可能性と美味しさを感じ、それをだれかに伝えずにはいられなかった。


ただそれは小難しいことではなく、真っ直ぐに美味しさで届けられることが本当に凄いことで、知識があろうがなかろうが問答無用でその世界に引き込める。そしてそれは幸せという時間と空間を作り出し、新しい気付きや明日への活力を与えてくれる。今回は三人の会話を弾ませくれ、これからのビジネスや飲食と小売の世界の状況や戦い方、個人として何をどのように発信していくのかなどを、料理と燗酒を楽しみながらディスカッションした。


固定概念なんてない

色々と仕事の話をしつつマサさんとも話をしていた中で、最所さんが『日本酒の、燗酒の概念が変わりました!』と言い、僕も『そうですよね!僕もここで概念変わったんですよ!』というやりとりをしているとマサさんが『ちゃうねん!日本酒なんてまだ概念が出来るほど知られてない。ここから作ってくんや!本当に美味い燗酒を飲んでもらうことで!』と。

これは他のことにも言えるなと僕は思った。概念ではなくて、先入観があるだけで本当のことなんてみんな知らない。だから知ってもらう場所であったりモノが必要なんだなと。今作っている #アタラシイヒモノ  もそう。魚に対する先入観を変えるために、魚を美味しく食べてもらうために、日本の水産業を守っていくために、今何ができるか?この時代に合わせて変化させることで、もう一度魚の、干物の素晴らしさを伝えていきたい。

生産者の事を知ってもらう為に何が出来るか?これはシェフでも小売業でも同じで、どの様に商品の背景を伝えていけるかだと思う。世の中に様々なものがある中で、手に取ってもらう為に何が出来るのか。もっと深く愛を持って商品を作ったり伝えて行かなければならない。

僕は(僕の関わっているもの全て)物(物質)を売ってはいない。それを作ることに関わった人たちのストーリーと、それを手に取る人たちの時間を繋げ、意識を繋げ、価値を共有するための潤滑油となるモノであり、ヒトであり、時間をシェアしている。そしてそれは裏にある。

表には幸せや健康や美、美味しさがあり、そこから裏の物語を少しでも多くの人に知ってもらえたら良いなと。入り口はシンプルで良い。逆にいうとシンプルでなくてはいけない。そこからいかに自然に伝えたい事を感じ取ってもらえるようにするか。押し付けるわけではなく、提案し共感してもらう為に。

概念など作らずに、シンプルな思考で向き合うことが出来るか。

複雑な世の中だからこそ、より純粋で混じり気のないものが大切になる。

そんな事を感じた最高の夜でした。最所さん、平野さん(個人的には平野さんがめちゃくちゃ面白かったので、もっと深くこの人を探りたい)ありがとうございました!




皆様の優しさに救われてます泣