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技術=価値ではない。これからの時代の技術の学び方と活かし方。

お疲れ様です。お盆も終わり、夏もそろそろ終盤かなという今日この頃ですが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?

今回はタイトルの通りなのですが、技術=価値ではないよね?というお話をしていこうと思います。これは特に技術職の人に言えるかなと感じるのですが、技術がある=素晴らしい仕事ができる=価値がある。みたいな思考の変換はよくあると思うのですが、果たしてそれは本当なのか?という話です。

僕はレストランという場所を離れてつくづく思うのは、技術至上主義がいまだに多いという事。

大前提、技術職であれば技術があるのは当たり前です。しかもその仕事をやり続ける中で確実に磨かれていくし、磨き続けなければならないものです。そしてそれは、今までに身に付けたものを磨き続けるだけではなくて、新しい時代ごとに必要な知識と技術を身につけ続けるという事で、常に自分自身をアップデートする事です。

もうこれは大前提というか、これがあって初めて職人と言えるわけで、それがないのにこの仕事はやれません。(トップランナーという意味でも)

ということで、この前提(技術は磨き続ける)の元で、それであっても技術=価値ではないよね?という話をします。

技術がある事自体は一つの価値です。それは間違いない。でもそれだけで価値になるほど簡単な世の中ではない。この事実を心に刻むべきだと思っています。技術職の人からはめちゃくちゃ反感を頂きそうですが、この前提で仕事をしないと数年後には確実に仕事は減ります。すでに実感としてもある。

というのも、SNSがこれだけ一般的になり、多くの人が自ら発信をする中で、技術による差が見えにくい、技術による差をわかる人が少ない、技術による差を体感する機会や技術に対する知識がインプットされにくい。というのがあります。

これはかなり重要だと考えていて、僕たち技術職はこれだけ技術があるからきっと評価されるはずだ!と思いがちなのですが、そもそも技術の差がわかりにくい状況でその差だけを頼りにするのは危険です。たとえ技術の差がわかる人がいたとしても、技術が拮抗している者同士の場合その差分は何で決まるのか?そこを考えねばなりません。

僕は良くも悪くもレストランやパティスリーで働く一般的な人の技術力の差はそこまでないと思っています。勿論トップレベルの方達はその差は歴然ですが、中堅レベルの人たちにはあまりない。なぜならば、みんなそこそこしっかり修行して、そこそこ時間を費やしているからです。

雑な言い方ですが、誰でも続けてさえいればある程度の技術は身に付きます。しかしそこから更に飛び抜けて、圧倒的な技術になるまではかなりの時間がかかります。これは先に仕事を始めていた人が圧倒的に有利なので、年代が上になるほどアドバンテージがあります。(と感じている)

その中でまだ若い世代がどうやって自分のポジションを作れば良いのか?

単純な技術の比較では勝つ要素が少ない中で、どうやって差別化をするのか?という事を考えないと、長期的視点で危険です。どの世界でもそうですが、どんどんと現役の寿命が伸びています。そして大きな仕事は上の世代に行くことが多く、若い世代は頭を使わないといろんなチャンスが来にくい。

なので、世の中に対しても技術だけだと難しいし、業界内だけの話だとしても技術だけの戦いでは厳しい。という両方の側面から、技術を価値にするのは難しい。そもそも技術だけが価値ではないよね?という本質的な議論になると考えています。

軽くまとめると
①技術の差分を分かる人が減っているので、技術だけでは伝わらない。
②技術だけの勝負の場合、先行者が圧倒的に有利。
③長期的視点を持った時に、技術だけを価値にするのは危険。

という話です。

(何度も言いますが、技術はあって当然、磨き続けて当然。技術がないなんてありえない。技術を一生磨き続ける前提での技術の否定なので、そこは勘違いの無いようにお願いします)

では技術とはなんなのか?

技術とはなんなのか?それは価値を創造するための手段の一つです。料理人なら美味しいものを食べてもらいたい、食べてもらう事でお客様に喜んで頂きたい!というのが目的だと思います。(勿論ただ作るのが好きな人もいると思いますが)

その場合、お客様に喜んでいただくという目的の為に、どのような手段を使うか?という話です。美味しい料理を作る、という手段のために自分の持っているどの技術を使うのか?という流れです。

だからこそ、技術を身につける事ではなく、その技術によってどんな価値が生めるのか?を考えながら技術を身につけるべきなのです。そして技術にも当たり前ですが種類があります

①おいしく作る技術
②美しく盛り付ける技術
③レシピを生み出す技術
④早く作る技術
⑤衛生的に作る技術
⑥正しく作る技術(火入れなど)
⑦おいしさを伝える技術
⑧美しく撮る技術

雑に上げてもこれくらいはあります。ここから商品ごとに技術を細分化するともっとあるので、自分の持っている技術の棚卸しが必要です。

今自分の持っている技術が何で、どんなレベルなのか?仕事を始めたばかりの若手であれば、ほとんどの技術はないかもしれません。その場合、10年後にどんな風に仕事をしたくて、どんな風に稼いでいたいか?から必要な技術を精査して、どうやって身につけていくかを考える必要があります。

勿論なんでも作れてなんでも出来るのが一番良いのですが、世の中にこれだけ多くの職人がいる中で、なんでもできる、は本当に価値があるのか?も考えた方がいいです。

僕は性格的になんでもできないと気が済まないし、なんでも出来るようにほとんどの技術に対して学んできましたが、それでも得意不得意はあるし、好きな技術嫌いな技術も勿論あります。

身につけたけどほとんど使う機会のない技術も沢山ある中で、今20歳だったらどんな修行の仕方をするか?はかなり悩むと思います。きっとレストランで同じように働くことはしないかな?と思います。多分。どうだろ、やっぱり働くかな?難しいところです。

ただ、厳しいお店や一流店で働く意味は技術だけではなくて、マインドだったり帝王学だったり、箔を付けるためだったり、そのコミニティーでのつながりのためだったりと様々なので将来的に自分がどのポジションで仕事がしたいか?にもよります。なので技術だけで話はしない方が良かったかも。

でも今の時代で、今の選択肢があったら、選べないかもしれません。それくらい難しい時代。学ぶ事が多すぎるのです。料理だけではないからこそ、SNSやカメラ、IT、動画、コミュニケーション。必要とされるものが15年前とは桁違いです。

僕は多くの技術を学んだ上で今の自分があると思ってますが、かなりの生存者バイアスがかかってるのを自覚しています。だからこそ、客観的に判断する必要があると思っていて、大前提(多くてすみません)一生技術を学び続けられるなら、とにかく評価されるレベルの技術を一つ身につけて、その領域での立ち位置を作り、事業としての安定感を出しつつ、他の技術も学んで派生させる。がいい気がします。

というのも、複数の技術を並行して覚えるのは中々大変なのと、直近で必要なのは自分を助けてくれる稼げる技術なはずで、技術のための技術は余裕ができてから身につけても遅くないからです。

例えばですが、カフェをやろうと思った時に、色んなお菓子が沢山並んでるのもいいのですが、それらが全てが均等に売れることってあまりありません。お菓子屋さんでもそうですが、ロールケーキやシュークリームが売り上げを支えている。なんて話はザラにあります。

何が言いたいかというと、そのお店の看板となる強い商品があれば、それだけでお店はうまく行く可能性があるのです。この場合に必要なのは、お店の看板商品を作るための技術で、多くのお菓子を作る技術は必要なかったりします。

勿論多くのお菓子が並んでいるカフェがやりたい場合、それを達成するために、最終的に多くの技術は必要になりますが、最初から全て持っている必要はないのです。(とはいえ多くの技術を身につけたからこそ、一つの技術に活かされる、みたいな話もあるので難しいのですが、、、。)

何が言いたいのかというと、一昔前は技術さえあればどうにかなりましたが、今の時代は技術を持った上でそれをどう活かすか?を考える必要があり、どう活かすか?を考えた上で技術をどう学ぶか?という思考の使い方が必要だよねという話です。

今まで通りの学び方も勿論いいと思いますが、それが合わない、合いにくい時代だからこそ、これからの考え方や学び方、働き方を考えても良いかもね、という話です。

これはこれからの若い世代だけではなくて、今すでに技術がある僕らのような世代にも同じことが言えます。様々な業態が生まれ、オンラインだけで成立するお菓子やも増えていく中で、店舗も持って運営するだけでは足りない時代になり始めています。

お客様も変化し、働く従業員も変化し、お店も変化する。その中で僕たち技術者も変化しなければなりません。

技術をどう活かすか?

様々な料理が作れる、お菓子が作れる。という技術はとても多くの人が持っています。なので、それ単体ではあまり価値を生みません。数多くの人が持っている技術だからです。

お菓子が作れると美味しいお菓子が作れると素晴らしくおいしく評価されるお菓子が作れる。は同じお菓子が作れるでも全く意味が違います。

技術を持って生み出したものがどのような評価を受けるか?が大切で、それが技術が生み出す価値の一つです。勿論評価は関係なく自分が好きなものを作れて好きな人が買ってくれればそれでいい人もいるでしょう。

しかし経営をする以上はお客様を長期にわたって価値を提供しなければ続けることができません。

自分の作るものが、どこで誰にどのように評価されるのか?評価されたいのか?そのために必要な要素は何で、どう技術を使うべきなのか?

せっかく長年かけて身に付けた技術も自分が正しく活かさなければ勿体ない。正しく活かすにはどうすればいいか?どうすれば自分の幸せと直結する技術の使い方ができるのか?

なんでこんな事を書いているかというと、僕も含めて技術職は技術を身に付けることに関してはある意味強制的に叩き込まれるのですが、それ以外のことはほとんど学べる環境にありません。それは労働時間が長かったり、そもそも技術以外を学べる環境が整っていなかったりと理由はいくつもあります。

そして技術を身につけた後は大体が独立という道を選び、技術の力だけで一点突破するケースが多いのです。そして自分の店をやると日々の仕事に忙殺され、また学ぶ時間を中々取れない。そしてその日々を繰り返す以外に選択肢がなくなっていきます。

もっと修行時代に多くのことを学べていたら、もっと技術以外の大切な事を環境として学べていたら。そう思うことが少なくありません。今の若者でも同じような環境が続いています。

だからこそ、少しでも技術の活かし方を知り、技術がある事で自分の人生が豊かになる仕組みを作ってもらいたい。それは大金を稼ぐとかそういう話ではなく、自分の好きな事を健康で当たり前に続けられる未来が見えるようにすることです。

日本において食というコンテンツは本当に価値があり、世界に誇れるものです。しかしその食に従事する人たちはその価値ほど充実しているようには思えません。世界に誇れる食の仕事が、もっと幸福度が高く、世界に評価されるものになるために、働く人たちの環境の改善や地位向上も考えたい。そのためには技術至上主義ではなく、その技術の活かし方を学び、さらに価値を発揮できるようになって行きたいですね。

なんか取り止めもなく書いてしまいましたが、日本から世界に進出できる素晴らしいブランドや商品をこれからも生み出して行きたいと思います!

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皆様の優しさに救われてます泣