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おいしさをデザインする。vol.8

すっかり春らしくなり、それを超えて暑い日も出てきてます。マンボウが発令されたり緊急事態宣言がまた出るのか?という感じですが、今日もおいしさについて話をしていきます。

前回はこちら

今回はおいしさをどうやって伝えるか?どうすれば伝わるか?を考えていきます。

これはレストラン時代から考えていることで、お皿の上に存在する料理のおいしさと、その後の食べ手の行動によって感じるおいしさには幾分かの乖離があることを理解しなければいけないよって話です。

これは以前何かで書いたかもしれませんが、実際に食べる人の行動は料理人は制御できません。お皿の上のどの食材からどのように食べるかは食べ手が決めるからです。

作り手がこういう順番で口に入って欲しいな、と考えるならば、それを無意識に食べ手が感じてアクションを起こせるように配置することが必要です。僕はこれがとても重要だと考えていて、無意識で行動してもらうことに意味があると思うです。

これは価値観の問題もあるのですが、僕はお皿一面に様々なものが載っている料理が得意ではありません。おいしさに対する作者の意図を感じにくいからです。どこから食べれば良いかがわかりにくい料理は食べ手が無意識に迷うと感じているので、僕は苦手なのです。

ではどのように意識しているかというと、レストランでは基本的にナイフとフォークで食事をします。右利きなら右手にナイフ左手にフォークを持ちます。こうなると、基本的には左から右に食事は進みます。(体の構造的にいきなり右からは食べにくい)

そうであれば、左から右にかけて料理の味わいが変化するように盛り付けをすると、1皿の中での味の変化が最大化します。例えば、魚料理だとして、1番左に魚、次に付け合わせ、1番右にソースがあるとします。

この場合、最初に魚だけで素材の味を味わい、次に付け合わせを食べ、ソースも味わうように変化します。どのように食べてもらいたいかにもよるのですが、最初からソースがかかっていると魚単体の味は感じにくくなります。素材の味を感じつつ、ソースによってどう味が変化するのか?を感じてもらうなら別々に盛り付けて、自然な流れで味の変化を感じた方がいいという意図が存在します。

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他には縦に味を重ねる方法もあり、これはケーキのような味の構成です。ケーキはどの部分を切り取っても同じ割合でケーキが口に入るように層で作られています。このように、素材を縦に構成することで、口に入る食材が同時に味を感じれるように作ります。

僕の料理はどちらかといえばこの構成が多く、様々な味わいが同時に口の中に存在することで、味も食感も香りも最大限に力を発揮する状態です。これは食材のテクスチャーをあえて揃えることで、香りに意識を向けてもらうこともあれば、様々な食感を感じるように配置して、味が混ざり合っていく瞬間に意識を向けてもらったりもする。

どんな料理であれどんなおいしさであれ、そこに意図が存在して、それを伝える努力は必要だと思っています。

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(牡蠣とほうれん草と春菊の料理。ほうれん草のピューレに炒めたほうれん草を乗せて、その上に火を入れた牡蠣、生の春菊のサラダ、チップにしたほうれん草を重ねてほうれん草のパウダーをかけている。アクセントでピーナツオイル。テクスチャーをバラバラにした料理)

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(甲子柿と人参、ウニにコンソメとカカオを合わせた料理。人参のピューレとブランデーでマリネしてからセミドライにした柿、ウニを重ねて、コンソメと燻製オイル、カカオをかけた。テクスチャーを揃えた料理)


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