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病院事務職員はなぜ企業会計を勉強しないといけないんでしょう。

しばらくサボっておりました。

COVID-19が猛威を振るっているおかげで、お仕事も直接病院様にお伺いすることが減って、Webでの対応が多くなっています。それで楽になったかと言うとそういうことはなくて、以前なら移動時間で対応できませんで済んだのが、自宅からWeb会議にしましょうということになっています。また、対面なら相手の表情の動きからこちらが話したことへの反応を見ながら対応できるのですが、Webだと先様は病院にいらっしゃるので当然マスク越しになって、どんなふうに感じておられるのか良くわからなくて困ることがあります。

若干ストレスですね。

本題ですが、なぜ病院に来た事務職員は企業会計を学ばないといけないのでしょうか?
もちろん一般会計にはそのルールがあり、病院会計は企業会計がルールだからということはあるのですが、それ以上に大切なことがあると思います。

企業会計の根本である複式簿記の始まりについては諸説ありますが、14世紀イタリアのベニスの商人が採用した簿記法が最初というのが、広く言われています。
その当時のベニスは海洋貿易で富を集めていたのですが、この海洋貿易というのが、当たると大きいけど嵐にあったりしたら全財産を失うという荒っぽいものだったそうです。そのため、リスクを一人で負うことは難しく多くの出資者を募って船を仕立てて出発し、めでたく帰ってきたら売上と経費からしっかり利益を計算して、それを出資者に説明して理解を得るために複式簿記が利用されたと言われています。

何が言いたいかと言うと、複式簿記は「説明」のために重要でしかも有用なのでこれだけ世界中に広がったということです。誰に説明するかと言うと、中世ベニスであれば出資者だし、公立病院であれば納税者である住民とその代表である議会ということになります。

会計は英語でaccountと言いますが、これに可能の接尾詞のabilityをつけたaccountabilityは説明責任という意味になります。つまり、会計は説明責任を果たすための道具なんです。

私が昔いた自治体もそうでしたが、職員だけでなく議員も複式簿記を理解していない人がほとんどですから、議会での質問も損益が赤字か黒字かが中心でしたが、本当はその損益がどのように生み出されて、それが何に投資されてそして日々の経営を支える現金がどれだけあるか、というのが本当は大事なんです。そしてその情報は損益計算書だけでなく、貸借対照表とキャッシュフロー計算書を並べて読み込まないとわかりません。

これを読んでいる病院事務職員の方は、議会で次のような質問をされたことはありませんか?

去年の決算が赤字なので、病院事業は倒産状態ではないか?

答えはもちろんNoです。
では、あなたはその理由を議員に説明できますか?できるならどういう説明をしますか?

議員の疑問は住民の疑問です。議員にしっかり説明できないということは、住民に説明できないということです。
そういう状態で、繰入金は適切だ、と言えるでしょうか。

病院の事務職員が企業会計と簿記を勉強しないといけないのは、議会と最終的には住民に説明責任を果たすためです。でもそれは、多額の税金である繰入金が本当に住民のためになっているということを理解してもらう、突き詰めれば病院のためだということを理解してもらいたいです。

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