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5 医師は医療のプロです。事務屋は?

病院で一番必要な職種は何かというと、もちろん医師です。
医療に関わる行為は、患者の身体に様々な影響を与える侵襲的行為ですから、基本的には医師にしか認められていません。しかし、医師が一人で何でもかんでもできるわけではないし、そもそもそんな体制は不合理ですから、医師の指示のもとに看護師をはじめとする有資格者が法律で認められた範囲で医療行為を行うことができるわけです。それでもスタートは医師の判断ですので、医師がいないと医療行為はできないことになり、そうなると病院としての稼ぎである診療報酬が入ってこないことになります。

医師になるには、大学の医学部で6年間必要な知識を習得してから、国家試験に合格して、さらに2年間の初期研修を修了することが必要で、日本の中でも難しい資格の一つです。
そもそも医学部に入ることが大学入試では最難関の部類ですし、国試も2日間で臨床・一般・必修の3分野400問に挑むという、知力と体力の限界に挑戦するような試験ですから、これを突破してきた人たちは生中な頭の良さではないはずです。

とは言え、医師も人の子ですから、横柄な態度をとる、わがままな発言をすうる、常識がない、人の話を聞かない、などおよそ公務員社会で見られるつまらない態度をとる医師は、もちろんいます。
でも、多くの医師は患者に真摯に向き合って、少しでも病気を良くして患者のためになろう、と懸命に努力しています。私が存じ上げている先生方にも、年齢は若くても本当に尊敬できる医師がたくさんいらっしゃいます。

友人の一人が、医師についてこんなことを話していました。
「医者って本当に凄いよね。病気という人間が一番機嫌が悪くなる時に、優しく相手に寄り添えるんだから」
住民からの苦情に辟易していた元公務員としては、素晴らしい分析だと思った言葉です。

始めに書いたように、医師がいないと病院の経営は成り立ちませんし、医師を怒らせて退職されたり医局からの派遣がなくなったりすると、議会も巻き込んでの大騒ぎになり、挙句は長の責任問題にまで発展しかねませんから、公立病院で働く事務屋にとって一番怖いのは、医師の機嫌を損ねて辞められることです。
ただでさえ頭が良くて理詰めで話をしてくる医師の機嫌を損ねないように付き合うというのは、公立病院の事務屋にとっては物凄いプレッシャーなんです。

このプレッシャーを簡単になくすことは出来ませんが、軽くすることは出来ると思います。それは、医師というのはこういう職業の人なんだと理解して接することです。
彼らは医療については本当にプロですから、患者さんに対してはとても優しく接します。その一方で、同じ医療のプロである看護師には、時に事務屋に対するよりも厳しく当たることがあります。それは、病気を治して患者を幸せにするために全力を尽くす、というプロとしての行動です。
なので、そのプロとしての立場を理解してくれない事務屋の行動に対しては、とても不満に思うわけです。

公立病院の事務屋の皆さんは、医師を崇め奉る必要はありません。求められるのは、生命を守る医療を提供するプロとしての医師に対する敬意です。その立場は尊重しながら、病院経営であるいは行政運営において必要なことは、こちらも経営と行政のプロとして対応すれば、医師もそれは尊重してくれます。

まとめると、医療のプロである医師から行政のプロとして尊重される事務屋になるように努力することが必要、ということだと思います。

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