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他人は変えられないか?

私の好きな言葉の一つに、「過去と他人は変えられない、変えられるのは自分と未来だけ」というものがあります。
なかなか分かってくれない人を相手にするときに、無力感に包まれながら心に浮かぶときもあるし、明日のために頑張ろうと自分に言い聞かせながら心に呟くときもあります。

でも、この言葉には矛盾があることに先日気がつきました。

私もそうですが、この言葉は私が考え出したものではありません。どこかで誰かが話したことを聞いたか書いたものを読んで、そうだよな、とうなずいて心に残ったものでした。
そうなると、その時点で私は他人に動かされて変えられているんですから、「他人は変えられない」という前提に矛盾することになります。

先日、ある人と話しているときに「あなたはそうかもしれないけど私にはできない」と言われました。その後にその方にこの言葉を伝えたのですが、その時の私は「いや、あなたがやろうと思ったらできるんですよ、変われるんですよ」ということを知ってほしくて話したのだと思います。ということは、その時点で私自身も他人は変えることができるのでは、と期待していたんだ、ということに気がつきました。

ここから病院の話になるのですが、病院には多くの職種があり、それぞれに基本的な価値観が違います。さらにその一人一人がいろいろな価値観に基づいて行動するのですから、小さなものから大きなものまで衝突が起きるのは避けられないことです。
まず、資格を持った専門職である医療者と一般の事務職員では言葉も普段見る相手も違います。特に、病院勤務をやりたくて来たわけじゃない人がほとんどの公立病院の事務職員からすると、医療職は異世界の人に感じることもあるでしょう。逆に医療職の人もそう感じていると思います。そう言う時に、相手を変えようと努力することは、はっきり言って無駄です。特に事務職員が医療職を変えようとするのは、先ず諦めた方が良いと思います。

でも、違うことを理解してもらうことは出来ますし、相手を理解しようとしていることが伝われば、相手も理解しようとしてもらうことは出来ると思います。つまり、関係性を変えることは出来るはずです。
そのためにはどうすれば良いでしょうか?

まず、相手の土俵に上がることです。
もちろん、資格のない事務職員が医療を提供することは出来ませんが、例えば「先生、せっかく病院に来たので、手術というものを見学させてください、先生方がどれくらい頑張っておられるか見たいんです」とか、「看護部長、看護師さんの苦労を知りたいので、一日看護師さんの横について回らせてください、そして私にできることがあったら指示してください」とか言いながら現場に入ることをすれば、「お、こいつはこっち側に寄り添おうとしているな」とみてくれます。
さらに、定期的に院内をラウンドして、病棟師長さんやその辺の看護師さん、薬剤師さんや検査技師さんたちなどに、「今、何か困っていることありますか?」と聞いてることも効果があると思います。

「対応できないことばかり言われるに決まっているから、聞いて回ったらかえって相手を失望させるよ」と考えるのが、公務員事務屋の常ですよね。
でも、これって住民相手でも同じことを言ってないですか?
本当に現場の皆さんや住民が言ってくるのはできないことばかりでしょうか?
その中には、すぐできることやできるのに気がつかずにやってこなかったことはないでしょうか?

そういうものを一つでも二つでも解決するだけで、現場から事務職員への評価は変わります。そうなると、できなかったことについて、これこれこういう理由でできませんでしたご理解ください、と伝えるときの相手の反応は絶対に違います。なぜなら、相手も良くなってほしいと思って話していて、でも必ずできるとは思っていないからです。
また、こちらが何かお願いする時にも、相手は話を聞いてくれる態度が変わります。できないという答えでも、これはできないけどこういうことならできる、という代替案が出てくるかもしれません。

最初の話に戻ると、過去は絶対に変えられないし、他人を変えるのは難しいけど、自分が変われば他人を動かすことができて、未来を変えることができるかもしれない、というのが正解かなと思いました。

では、自分が変わり他人を変える手段はあるか、ということですが、あります。
それを教えてくれるのがこの本だと思います。
上に書いたように、職種も価値観も違う多くの職員がいる病院こそ、対話が重要だと考えさせてくれた本です。
実は今井さんがこの本で紹介している「対話の場」作りを、お手伝いしている病院でぜひ作りたいと考えているんですけど、まだ実現できていません。
どなたか先にやってくれませんか。

「対話で変える公務員の仕事ー自治体職員の「対話力」が未来を拓く」
今井 寛著
https://www.koshokuken.co.jp/publication/practical/20210330-567/

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