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日本は破綻しないのか?


今日は公立病院とは直接の関係のない話から。

文芸春秋11月号に掲載された、矢野康治財務事務次官の借金だらけの日本の財政はおかしい、という論文に対して、浜田宏一イェール大学名誉教授がPresident Onlineにウソだという論文を書かれています。

イェール大名誉教授「"日本財政は破綻寸前"はウソと断言できる理由」 財務次官論文はフェイクニュース #プレジデントオンライン  https://president.jp/articles/-/51806

浜田名誉教授の結論は、「財政の健全性をより正確に測るには、政府の純資産(総資産から総負債を引いたもの)によって測られるべきなのである。図でいえば、日本の純資産はほとんどゼロであり、他国と比較しても健全と言える。」というものです。

財務事務次官もイェール大学名誉教授も、どちらもとても権威のあるもので、私みたいな元バカ学生が評価したりできるものでは、ありませんが公務員の端くれだった者としては浜田名誉教授の論は少し乱暴だな、と感じます。


まず、借金は資産に形を変えているのだからその両方を見るべきだ、というのは経営学の教科書にもたぶん載っていることで、間違ってはいないのですが、問題はその資産の中身です。
企業における資産は生産手段で、それを使って収益を上げて純資産の増を図ります。
企業が何らかの理由で存続できなくなったときはその資産を処分して、取得に要した負債を解消します。つまり借金の担保の側面があり、処分された資産を取得した人は、またその資産を生産手段として利用して利益を上げるようにすることができます。

一方で政府などの公共機関ではどうでしょうか?
まず政府などが持つ資産は、「公共財」という表現があるように、国民や住民の利用や福祉の向上を目指すためのもので、再生産のための利益を生み出すものではありません。したがって、仮に借金=国債を弁済するためにその資産を売却したら、その公共財で生み出されていた国民・住民の利用ができなくなり福祉が実現しないことになります。

例えば国の試算である国道は長大な用地とその上の道路施設からできていますが、仮に民間が購入したところで、それを道路以外として利用することは出来ません。民間は、有料道路に転換して利用料を取って収益を上げないと、維持補修すらできません。
国民からすると、それまでは税金という目に見えない形で維持補修されていたものが、利用料という負担が発生します。その分税金を下げれば良いではないか、となるかもしれませんが、国の道路特会は道路を作るための借金の返済に必要ですから、国道を全部売り払って国債を償還できなければ、例えばガソリン税などを引き下げる訳にはいきませんので、新たな負担として発生するわけです。

私が関係している公立病院でも考えてみましょう。
公立病院の経営状態が悪く、毎年損失を生んで経営が行き詰ったら、土地や建物、医療用機器などの資産を売却して借金を返して病院を閉鎖するか、民間に病院そのものを売却することになります。
買ってくれる民間の方がいればまだ医療提供は続けられますし、もしかしたらサービスも向上するかもしれませんが、そうでなければ住民への医療提供が止まります。僻地や離島の、ワンアンドオンリーの公立病院であれば、その時点で医療サービスが消滅することになります。
そうなると住民は、離れたところにある病院まで移動して受診することによる費用と時間を新たに負担しないと、医療サービスが受けられなくなります。
行政や住民は、病院を維持する負担と新たに発生する費用や時間の負担のどちらを選ぶかを選択しないといけません。そして、予算はゼロサムゲームですから、病院を維持することを選ぶなら、それ以外のサービスや投資を減らすことも考えないといけません。
「建物や医療機器という資産になるから、借金をしてもかまわないだろう」という理屈ではないはずです。

国家財政でも結局同じことではないでしょうか。

何が言いたいか自分でも良くわからなくなってきましたが、要するに、資産があるから借金はしても良い、というのは、少なくとも政府や公共機関についてはあまりにも乱暴な意見ではないですか、ということです。

繰り返しますけど、国や自治体が持つ資産は、住民の利便性と福祉の向上のためにあるということを忘れてはいけません。

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