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次は、損益計算書と貸借対照表を「読んで」みようじゃないか。

こんにちは。
いよいよ夏が近づいてきたことを感じさせる天気が続いています。

5月から始めた、支援している病院様の初めて一般会計から病院事業会計へ来た職員さんへの公営企業会計の勉強会は、2つのシリーズで計6病院様への講座を終わることができました。
多分に私の準備不足や説明下手があり、いくつかの病院様からいただいたアンケートは、やや満足が多数という結果でした。この中には不満に近いやや満足もかなりあるものと思いますので、改良に取り組んで、来年もまた一般会計からいらっしゃる皆さんのお手伝いをできるようにしたいと思います。

その中で、一般会計から来た事務職員は、私も含めて、損益計算書はまだ理解しやすいのですが、貸借対照表はちょっと理解が難しいだろうなと感じられました。勉強会の中では、貸方・借方というのは単に仕訳の左と右と言うだけで、お金の貸し借りや増減とは直接関係ないんですよ、とお話をしていますが、やはり字面だけから見ると「?」ですし、貸借対照表も貸し借りという字が入っているので、普通の感覚ではわかりにくいところがあります。

損益計算書は、企業のその一年の企業活動の結果を表した成績表です。企業活動でどういう形で収益が入ってきて、それをどのような費用で使って、その結果利益が出たのが損失が生じたのかを表しています。
一方貸借対照表は、企業が始まってからその期までに、経営資源がどのように集められて、それが今どのような形で残っているのかという企業活動の結果を表しています。ですから、この両方の数字を並べて見ると、その企業ー私たちの場合だと病院がどういうものか朧げにですが見えてきます。

例えば、損益計算書を見た時に、入院収益の割合が高くて医薬品費よりもその他の診療材料費が多い病院については、たぶん内科系よりも手術などの外科系の診療科が強い病院だろうな、と見ます。そして、そういう病院で給与費比率(医業収益に対する給与費の割合)が低いと、なるほど手術などでしっかりと稼いでいるんだな、と考えます。
入院収益の割合がとても高くて給与費比率も高い、医薬品費以外の診療材料費がほとんどない病院だと、たぶんこれは精神科の病院だな、と見ることができます。

損益計算書で建物の減価償却費の割合の低い病院は、たぶんそろそろ建て替えを考えないといけない病院かな、と考えて貸借対照表で減価償却累計額の割合を確認します。この額が大きいと、やっぱり建物は古くなっているんだろうなと見ることができます。
貸借対照表では、一番に流動資産の現金及び預金を見ます。この数字が悪いと損益がどれだけ良くても経営は要注意だからです。さらに、未収金の割合が高いと、病院としては考えた方が良いのですが、公立病院は押しなべて未収金の割合が高い傾向が見られます。低所得の人でも公的な使命として診療しないといけないし、その結果として未収金につながっているようです。

こういうのを見るときに、公立病院にはとても便利なツールがあります。

病院事業決算状況・病院経営分析比較表
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/hospital/kessan-bunseki/index.html

ここでは、全国の公立病院の損益と貸借対照だけでなく、病床数や職種別の平均給与、医師や看護師一人当たりの入院・外来別の収益など、病院の状況を表す数字が本当に詳しく載っていて、その病院の現在の姿をかなり詳しく教えてくれます。

ということで、後半にはこの資料を使って、病院の損益計算書と貸借対照表を「読む」、そして犯人像ならぬその病院像を推理小説のように考えることを楽しみながらできないか、と考えています。
できたら福岡市の今村さんがなさっている「出張財政出前講座」のように、損益や貸借をリアリティを持って理解してもらえるような工夫をやってみたいな、と身の丈をはるかに超えた大きな野望を秘めているところです。

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