【どこでどう書くかは質に直結する】最高のアウトプットをするための環境づくり(2012年12月号特集)
書く環境は整っているか
小説を書くという作業は、登山にもたとえられる長い戦いです。専業作家でも長編なら一年がかりになったりしますし、いわんやアマチュアにおいてをや。だから必要なのは根性だ、忍耐だ、信念だと言ってもいいのですが、その前に、以下の三つを実行してください。
1.書斎を持つ
2.パソコンを買う
3.照明と椅子を揃える
作家の中には、台所で書いた、廊下で書いた、押し入れが書斎といった武勇伝を言う人もいますが、彼らはそれでも書けた例外と考えてください。劣悪な環境では普通は書く気も失せます。
1の書斎ですが、必ずしも部屋でなくてかまいません。独り暮らしでもなければ個室はないでしょうから、居間や寝室の一角をパーテーションで仕切る程度でかまいません。要は家族の団欒や生活音から自分を隔離できればOKです。
2のパソコンはプロ作家には必需品です。手書きのよさ、ワープロ原稿の弊害もありますが、プロになりたいなら道具には投資を惜しまないこと。
インターネットは便利ですが、できれば書斎のパソコンにはネットは接続しないようにします。サイトを覗いたり、ゲームをしてしまったりするからです。
長く書くためには、3の照明と椅子はとても重要です。光量の足らないライトでは目が疲れますし、逆に強すぎれば目が痛くなります。ライトは部屋全体と手元を照らす二つを用意します。
椅子は長時間座っていても疲れない事務用のものを入手します。見た目はよくても疲れやすいもの、そもそもが椅子ではない台座のようなものではだめです。
書くとき以外でも座りたくなるようなものを選んでください。
仕事を持っている人は朝書け
作家が原稿を書くときの一般的なイメージは、「あるとき、天啓のようにストーリーが降りてきて、三日三晩、徹夜して一気に書いてしまう」という感じだと思いますが、これは映画や漫画の中でそう描かれることが多いからで、プロほど毎日少しずつ規則的に書きます。量産している作家でも平均すれば一日に十枚も書かないでしょう。
勝目梓『小説家』には、「毎日五時に起きて、仕事に出ていく前の二時間余りを小説の習作に当てる、ということを始めた。それを日課としてつづけた」と書かれていますが、仕事を持っている人はこの方法がベストです。夜は仕事疲れもあって意外と集中しにくいものです。
朝の執筆が終わったら出勤します。通勤の途中は読書か、朝書いた小説の続きを考えます。昼食は五分で済ませ、残りの五十五分でまた執筆。このとき、朝の通勤時や勤務中にストーリーを練っておくと、すぐに続きに取りかかれます。原稿をデータで持つかネット上に保存しておけば、外出先の空き時間にパソコンやスマホで続きが書けます。
芸術家は職業なのか
芸術家というのは肩書きではありますが、職業ではありません。なかには、芸術のために制作した作品が売れて、その収益で生活が成り立っている人もいますが、それはレアなケースであって、大半の芸術家は、職業的収益源は別に持っているものです。
たとえば画家。大半の人は絵では食えませんので、絵画教室を開いたり、公務員や自営業者であったりして、なんらかの副業(収入的にはこちらが本業に近いのですが)を持っています。
小説家も同じです。年に一回、単行本を出版したとして、一冊1500円、初版発行部数が4000部、その一割を印税としてもらうと60万円。
年収60万円では主婦のパート以下、これでは家族を養うどころか、自分一人食っていくこともできませんから、副業として講演、インタビュー、雑文の執筆、文章講座や小説講座の講師、文学賞の下読み、あるいは小説とは無関係の仕事に勤しまないといけません。
もちろん、単行本の前に雑誌に書いているなら原稿料が発生しますし、単行本の売れ行きが好調なら増刷もかかります。
さらに文庫になればまた印税が発生しますが、しかし、それでも年に二、三冊ペースで出版しないと職業的には苦しい。
よほどの売れっ子でない限り、時間的にも肉体的にも比較的楽な副業を持っていないとやっていけないかもしれません。
少しずつ書き、完結させる
帰宅後はまた執筆をしますが、書いてばかりだと読書をする時間がありませんので、夜は小説を読んだり、調べ物をしたりする時間に充ててもいいです……
環境整備・スケジュール管理の極意とは
特集「作家になる技術」
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※本記事は「公募ガイド2012年12月号」の記事を再掲載したものです。
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