双子の話
突然だが、皆様は双子というものについてどのような印象を持たれているだろうか。外見が瓜二つ、言動や行動が似通っている等々、とにかく『似ている』というイメージが強いのではないかと思う。
なぜこんな話をし始めたのかと言えば、私自身が双子だからである。
という訳で、今回は双子ならではの体験談や感覚等、個人的な感想を書いてみたいと思う。
【双子の種類と小ネタ】
私と姉は「一卵性双生児」という、同じ受精卵が分裂して生まれたケースになる。一番よく聞く双子はこちらではないだろうか。
それは簡単に言うと遺伝子的に(ほぼ)一致する存在がこの世にもう一人居るという状況である。元が同じ受精卵なので性別や血液型が同じであり、外見的にも見分けが付かない程よく似ていることが多い。
「二卵性双生児」の場合は元が違う受精卵になるため、性別や血液型が違う場合がある。このケースは同じタイミングに生まれたきょうだいと考えた方が分かりやすいかもしれない。
ちなみに予め双子と分かっていたのもあり、自然分娩が厳しく母は帝王切開を選んだのだそうだ。そのため、後から生まれた方の私は一応妹という扱いである。昔聞いた話によると、自然分娩の場合は後から生まれた方が長く頑張ったからという理由で姉や兄となるらしい(事実かは不明)。
また母から聞いた話だが、母は出産時にある夢を見たそうだ。
その夢は神様らしき存在と対面している夢で、「一つやるか?」と聞かれたので「はい」と答えたとのこと。その後で「もう一つやるか?」と聞かれたので、それも「はい」と答えたのだとか。
そのお蔭で二人とも無事に生まれたと母が言っていたのが印象的で、今でもその話をよく覚えている。
【 双子のきょうだいが居るということ】
双子ってどういう感覚?と割と頻繁に聞かれるので答えると、基本的には普通にきょうだいが居るような感覚と同じなのではないかと思う。
恐らく違うのはそれが同い年であり、特に幼い頃は同じイベントを同じように体験して成長し、何をするにもずっと一緒だった為か距離感がどんな家族よりもずっと近いこと。そして一卵性だからという理由もあるとは思うがやはり共通点が多く、物事の考え方や感覚が近いため、互いに互いを一番の理解者のように感じていることが挙げられる。
更に私も姉もそれぞれ自我のある別の人間ではあるものの、どこかで遠い昔に分かたれた半身のように思う感覚もあると言って差し支えないかもしれない(実際分裂してる訳なので事実そうなのだが)。
【実際のところ似ているのか否か】
では、そんな姉と私はどこまで似ているのか。
外見は勿論似ている……かと思いきや、実は意外とそうでもない。
私達の場合ではあるが、生まれた時点で姉は正常だったのに、私は当時未熟児と呼ばれる状態で差があった(栄養が片方に偏ったケース)。
その後も私の方が若干小さいまま成長しているし、元は同じでも生まれてからの成長の仕方よっては差が出てくるという良い例である。私達の場合は身長差もあるため、家族や昔からの友達は口を揃えて似てないと言う。
とは言え、どれだけ成長しても細かい顔のパーツや全体の雰囲気は同じようなので、初見の方には似てると言われる。そう考えると、やはり全体的に言えば何だかんだ一卵性は似ているのだなとは思う。
ちなみに声は激似らしい。電話ではしょっちゅう間違えられたし、二人で喋っているのに一人のように聞こえると言われたことすらある。
声以外に似ている部分としては、思考回路や物事の着眼点、発想が一番そうかもしれない。同じ環境で同じように育ったからかだと思うが、何かを見た時聞いた時、体験した時に思うことが大体一緒である。
双子が同時に同じことを発言するという言うのはあるあるだと思うが、それは私達にも当て嵌まっている。やはり根本的な脳の作りや考え方が一緒だからなのか、とにかく会話が円滑で話のテンポがとにかく早い。
相手が言いそうなこと考えそうなことがすぐ分かるので、最後まで言わなくても大体話が通じてしまうからである。そうやってぽんぽん会話している様子を見た人から漫才みたいと常々言われてきたが、自分でも本当に阿吽の呼吸だなと思う。
それもあって、私と姉は本当によく話をする。互いに気付いたこと知ったことを共有するのが好きだし、互いに相手の経験から学んで今後に活かしていく。ある意味身体が二つあるような感覚で、倍速で経験値を稼いでいる状態とも言えるのかもしれない。
【双子の違いについて】
とは言え、私も姉もそれぞれ自我のある別の人間である。当然違う部分もあるし、双子だからと行って同じに見られるのが嫌で見られるのが嫌でわざわざ変えたところもあったりする。
成長するに従って感じた一番の違いは、物事への熱中の仕方だった。
私は一度ハマると割と長続きするタイプだったが、姉は割とすぐに飽きてしまう。そしてそのことについて尋ねると、実は何にも興味が持てないという話をされて心の底から驚いたことがある。
好きなものもあまりないし、心から熱中できるものもほとんどない。今度こそと思って流行りには乗ってみるが思ったより熱中できなくてすぐ飽きる。姉が『好き』と公言しているものの中には、周りに合わせる為にそういうことにしているものすらある、と。
私は真逆で世の中に好きなものが溢れすぎているし、好きなことをする時間は本当に楽しくてつい時間を忘れてしまう。想いが強ければ強い程長続きするし、飽きるというより他のものにより深くハマって乗り換える感じで、私は常に何かしらに熱中していた。
だからこそ姉のその感覚に初めて共感できなくて困惑したし、本当に衝撃的だったことを覚えている。このように双子だからと言って、すべてが一致するとは当然限らないのである。
いきなり重い違いを書いてしまったが、軽い話にシフトすると姉と私は利き手等も違かったりする。鏡合わせのように左右対称の特徴を持つ双子をミラーツインと表現をするらしく、これに私達も該当している。
また、同じに見られるのが嫌で変えた部分で代表的なのは服装の趣味だと思う。双子だからとお揃いの服や色違いの服を着せられていた私達だったが、小学校高学年くらいから急にお揃いが嫌になり、同じ日に同じ服を着ることがないように意識してずらし始めた。
そして中学以降は完全に別で服を買うようになり、今となっては服から小物に至るまで姉と趣味が一致することはない。思えばあの辺りが自我の芽生えというものだったのかもしれないと思う。
【個人的に大変解せないこと】
他の大きな違いとして、これが私達双子における最大の謎になるのだが……姉はなぜか大変モテる。それはもうびっくりする程である。
私が異性に対して苦手意識があって話すのにも一苦労なのに対し、姉は全くないらしくむしろ手玉に取る勢いで夢中にさせてしまう。
顔はほぼ同じはずなのに本当に解せぬ……!!
どうやら恋愛面のあれこれについては、後天的に取得するものであるということがよく分かる話であった。冷静に考えれば、そもそも私が異性に対して苦手意識があるのは後天的にそうなったのだから当然ではある。
何はともあれ、そのモテ力を分けて頂きたい……。
【最後に】
何はともあれ、そんな違いがある双子ではあるが私も姉も一つ確信していることがある。それは、私達は絶対に縁を切れないということだった。
別々の生活を営んでいたとしても、当たり前のように互いの意識のどこかにその存在があるからか、それがなくなるというのが到底考えられない。
何度か激しい喧嘩をしてそのまま音信不通になるかと思う場面もあったが、結局互いに数日で音を上げて和解していた。
互いの身に何か起これば相手にも同じくらい精神的に負荷が掛かるし、切っても切れない関係とは正しくこのことだと心から思う。だから私達の間で揉め事はなしにしようと予め話しているくらいだったりする。
そんな私と姉が世の中におけるスタンダードな双子かと言えばそんなことはないに違いないとは思うものの、世の中にはこんな双子も居るのだなと思って頂けたら幸いである。
□関連note(この姉と行った話)