「ひとひら」

今年の桜は長いですね。ゆっくりと散る情景を見て思い出すのは「秒速5センチメートル」。今でこそ新海さん大ヒット飛ばしてるけれど、当時はダークすぎる名作で上京した自分を蝕んでいた記憶があります。舞台が岩舟ってのもまた、ね。笑

ということで、今回は「ひとひら」。同じ桜の花びらでも、秒速5センチメートルが完全にダークに突き落とすのに対して、ポルノグラフィティは優しいです(笑)。
発売は2013年のベスト版。2013年というと、僕は大学卒業して社会人一年目で、ずーっと栃木で実家で暮らしていた中で初めての上京、初めての一人暮らし、初めての仕事でした。

入社した会社は、やりがいがめちゃくちゃあってすごくいい職場で、だけど世間的に言うと「ブラック」(笑)。1年目からありがたいことにでかい仕事任せてもらえた僕は、一時期毎日深夜まで働いて終電で帰る日々。
「オフィスビルにひとつ残る蛍光灯の明かりの下で」から始まる歌詞でもう心を持ってかれ、「猫が鳴いた気がしたけど空調の低いうなりと」がもう共感すぎてヤバかったです。当時の仕事で真夜中にFAXが送られてくるような環境で、複合機の音にめちゃくちゃ過敏になっていて、プリンターが動く幻聴?聞き間違いがあったほど(笑)。

静かな優しいメロディのAメロでかなり心をもってかれ、サビ。
「夜な夜な語った夢と、果たせないままの約束たち」
「灰色のふるさとを捨て、東京にかりたワンルーム」
「憧れを抱き、希望を描き、うれしくて眠れなかった」

もうこんなの感動しないわけないでしょう。東京にかりたワンルームで、憧れを抱き、希望を描いていた上京当初、そして、理想とはちょっと違うのだけど奮闘する日々と、疲弊していく自分。

2番サビの
「飽きもせず聞き返したメロディ、分かっていなかった歌の意味。今なら少しわかる気がする、まるで違う歌のようさ」
これも、社会人になって、何度も何度も聞きたい歌詞です。学生、社会人一人暮らし、そして今は結婚して一児の父。それぞれ立場でいろんな曲を聞くと本当に違う曲に、新鮮に聞こえる(UNFADED?笑)。

あと、それぞれサビの最後の1フレーズの言葉の力強さがすごく好きです。拳を握ってしまうような力強さ。そこに過去と今の気持ちが乗り移る。同じく力強いのがCメロ
「地図でもあればいいが、どこにもないけど、コンパスだけはこの胸にあるだろう」
この、「コンパスだけはこの胸にあるだろう」の部分がめちゃくちゃ好きです。胸に拳を握って聞きたくなります(笑)。そして秀逸なのが、この力強い言葉から始まるこれまた力強いギターソロ。ここがすごく気持ちいい。そこからラストサビまでの流れは、ポルノグラフィティらしさ満載です。

普通の??曲ならこれだけ盛りだくさんで十分なのですが、ひとひらのすごさは最後のメロディまで続きます。「美しい涙」の後から始まるギター!これが段々と盛り上がってきて歌詞が終わった後に絶頂を迎えます。激しく力強く、最後の最後まで。それはまさに桜の花びらのように綺麗に散っていきます。

ひとひらって、頑張ってる自分に対して、直接的ではないですが頑張れって応援する曲だと思ってます。その応援してくれるのが、確かに自分が辿ってきた誇るべき過去であり、それにすがるわけじゃないけど、大切に、未来に繋げていこうって曲だと思ってます。

春の、桜が舞う季節に。

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