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海洋散骨の体験談

二級特殊の船舶免許を持つこーさくです。
故人を海洋散骨にて弔うことになり、他の方が操船する船に乗りました。
船に乗っている人間だからこそ、乗らない方の疑問や必要なことをお伝えした方がいいと思い、ノートにまとめました。
たかが数十分ですが、海を舐めてはいけません!


かかったもの

・費用:約25万円 ※葬儀業者に支払い
(船は遺族貸切、埋葬書類等の必要な書類の委託、粉骨→参列者人数分に小分け、花と酒の用意、操船とガソリン代も含む)
・実質所要時間:30分程度

おすすめな服装 ※船上では基本手ぶら
・パンツスタイル(ふんわりしたもの、スカートは引っかかるおそれがあります)
・スニーカー(底がゴムのもの、簡単に脱げないもの)
・羽織もの(雨風しのげて洗えるもの)
・髪が長い人は束ねる(海風でバサバサになります)
・ファスナー付きカバン(ひっくり返しても中身が出ないもの ※船内に預けられます)

乗船前にやった方がいいこと
・トイレに行っておく。(マリーナでも汚いところはあります。30分程度なので船のトイレは使えないと思ってください)
・酔い止めは乗船前に飲む。(乗船中は飲んでるゆとりはないです)
・靴紐はきつく縛る。(波に対して踏ん張る際に靴の中で滑ってそのまま転落します)

人によっては必要なもの
・遺骨、遺影(代表の方が持っていかれるかと)
・エチケット袋、ペットボトルの水を用意する。(酔いやすい人はポケットにエチケット袋を入れておきましょう)
・着替え(吐いて汚したり、波を浴びて濡れる場合があります)
・靴(濡れる場合があります)
・予備メガネ(揺れて顔をぶつけ、メガネが吹っ飛ぶ場合があります ※過去に経験あり)
※着替え、靴、予備メガネは船に持ち込まず、マリーナのロッカーや車の中への保管でOK。船上で着替えることは不可、汚れたまま下船してください。預けられない時は船に持ち込む。


遺族として海洋散骨に参列してきました。

その体験談を書き残しておきます。

船は33フィートで、15人乗船可能な大きめのパワーボート。
クルーは操舵手と補佐の2人だけ。マリーナには発着の手伝いをするスタッフが1人居ました。

まず、船に乗るのに高低差がかなりあります。波で転覆しないよう掘りを深く作られているため、船とはそういうものとご理解ください。※足が悪い方、歩けない方の乗船は危険です。

段取りなどを船の上で聞き、腰巻き式のライフジャケットを着用。ウエストポーチのような形で、背中に来るのが正解です。※ライフジャケットの着用は義務なので、必ずつけましょう。
(個人的にはこの腰巻きタイプは危険と思っているので、やや不安でした。子どももゆるいながらも同じものを着用。いや、子ども用は?!)

荷物は船内で預かってもらえるので、海に落としても後悔しないものだけ手に持ちましょう。(遺骨も遺影もお預け可能)
飛行機で不時着して逃げる時と同じ格好と思ってください。カバン持って海に落ちたら、荷物に引きずられて溺れます。※預かってくれなさそうなら預かってください!と言いましょう。手ぶらが基本です。
私はスマホのみ手持ちにし、カバンのように斜めがけにして持てるようにしました。

操船は船内で行われるため、デッキは遺族が好きに使っていいのですが、基本的には備え付けのイスに座ります。(もし気付けたら左右の重さによる傾きを気にしてください。片方に寄ると船は傾きます)
移動中は海風が気持ちいいです。ただ、時期や天気によっては日差しや風、波が最悪なので、天気予報(波や風も!)はよく見て対策しましょう。※カッパや上着、エチケット袋などのクルーのサポートはありません。
私が乗船した日は風が強かった(8m)ため、湾から出た途端に横揺れが激しく、半分の人が酔い止めを飲んでも船酔いをしていました。

出港から10分。
めちゃくちゃ揺れてますが、クルーは慣れているので淡々と散骨の式が始まります。※アンカーは落としませんでした。

1.クルーから海に溶ける和紙に包まれた遺骨を1人1つ受け取る。海に投げ込む。(みんな最期のお別れや感謝を口にしていました)
2.クルーから花びらの入ったカゴを1人ずつ受け取り撒く。波によって海に花道ができて綺麗です。
3.クルーから花輪を1つ渡され捧げる。ひっくり返ってしまいましたが、先に海に撒かれた故人がよく見えるねって結論になりました。
4.クルーからお酒を1瓶渡され、参列者で回しながら捧げる。故人は飲まない人ですが、お清めなので。
5.鐘を鳴らしてもらい黙祷。目を閉じたり手を合わせるために離すと船から落ちそうな波だったので、みんな、心の中で故人を偲ぶだけで精一杯。

儀式が終わり、座っている場所に戻ります。
花輪を目印に1周以上回ってからマリーナへ帰ります。
帰りも波がバッサンバッサンしてみんな必死に手すりに掴まりますが、10分程度なので耐えました。
湾内に入れば穏やかです。

マリーナに到着し、完全に船が停まってクルーから指示があったらライフジャケットを脱ぎます。
その後、下船。陸酔いしてない人でバケツリレー形式で荷物を運ぶのが良いです。※船に乗る人は大抵これで荷物の積み下ろしをします。

今回散骨した場所は岬にある公園から見られるところでした。故人を偲ぶ際には船を出すことなく、公園から海を見ることで会うことができると教えてもらいました。
埋葬許可証などは葬儀業者経由で後日連絡をくれるということで解散。
予定時間は1時間でしたが、実質30分程度で終われました。
それでも、十分心に残る海洋散骨となりました。

これから散骨に行かれる方、検討をされている方のご参考になれば幸いです。

海洋散骨の様子


メンタル的なお話

墓をどうするかという問題は生前からあり、墓守のことを考えると散骨がいいとなりました。
また、この海は思い出の地(デートしたそうです!)とあって、散骨は海にしようとなりました。
葬儀業者と契約を結び、骨壷を預け、粉にされて小分けになっていく過程で、どんどん喪失感に襲われました。
このまま大きな海に弔ってしまってはなにもわからなくなる、という感覚です。
しかし、きちんと話し合って決めたこと。
船に乗り、お別れをして、みんなで食事をして解散。
岬の公園から手を合わせれば故人を偲べると言われましたが、広大すぎて“そこに居る”感じはまるでなく、遠くへ行ってしまった感が強くなりました。
土地に墓があり、“ここに居る”ことの意味をわかった気がします。

この喪失感を支えてくれるための本を選びました。

作・絵:スーザン・バーレイ
『わすれられないおくりもの』

アナグマが死を悟り静かに去っていきます。
残された者たちは故人をしのび、教えてもらった数々の技術から、アナグマの生きた証を心に宿します。
子どもの教科書に載っていたお話でもあります。

墓守は大変ですが、この虚無感を慰めてくれるものだと言えるのかな、と感じました。
海洋散骨は一般的な埋葬より喪失感が半端ないですが、選んだ道を、故人をしのびながら少しずつ歩んでいきたいと思います。

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