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わたしとウサギと貝と

少し寒い、静かな部屋で物音がする。
キッチンのコンロの上のボウル。約200gのアサリたちが砂抜きをされているのだ。
ボウルに被せたアルミホイルに、アサリが噴き出した水の当たる音がする。わたしはそれをBGMにして『カラマーゾフの妹』を読み進めるのだけど、小腹が空いてあんまり集中できずにいる。

3%の塩水に1時間浸けて、水を切ってさらに30分(をすでに大幅に超過している)。水切りをしてからのほうがアサリたちが活発になった気がする。水に浸かっていない方が生きやすいのかな。
アサリたちはパック詰めされた後も生きている。切り身にされた魚たちと一緒に店頭に並べられて、アサリだけは生きている。

今、家にいるのはわたしと飼いウサギだけ。静かな家だと思っていた。
しかし、本当は約200gのアサリの群れと束の間の同居をしているのだ。個体数で言ったらアサリの方が圧倒的に多数派だ。わたしの家じゃなくてアサリの家なのかもしれない。
とりとめのないことを考えていたら、軽くホラーな展開になってきたぞ。
……早いところ、鯛の切り身と一緒にアクアパッツァにして食べてしまおう。

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