#12 刑務所のルールを変えた『100のこと』

「何やらパンフレットが届いている、と刑務官からお知らせがあった。が、パンフレットって何だ?何を送ったの?」
何通目かの手紙でやっときました。私が最初に送った『一緒にしたいこと100』と思われる荷物です。

もはや彼の目に触れることはないと諦めていたし、それならそれでいいよ、と彼に対して多少投げやりな気持ちにもなっていたので、どっちでも良かったのですが、どうやら見ることは出来そうな予感です。

私がコンビニで宅急便を出してから一週間。
「バカ野郎。男泣きだよ。」
やっと彼の手元に『100のこと』が届きます。しかも見るだけにとどまらず、彼の手元でキープすることが許されたのです。

100のこと全てにシールを貼り、3分の1ページにはポラロイド写真を貼り、最後の仕上げで香水ですから、本来は絶対にダメらしいのですが、幹部の方々が「ここまで手作りして送ってくれた彼女の気持ちを…」とsuper特別に交付してくれたそうです。
「アクビの愛は塀の中のルールも変えた!さすが俺の女!」

そして、この一件が相当彼を気持ち良くさせてしまったのです。

彼の居場所が判明してから出てくるまで毎日(ただし、また衝撃の事件が起きて書くのをストップしていた一時期を除いて)、最終的に201通の手紙を送りました。

     
僕のステイタス③ 友達がたくさんいる(フリ)

土日を除いて、俺には毎日手紙が届く。そんなヤツは他にはいない。アクビや母親、時には弁護士や仕事絡みの封書がN氏から来るから、一度に4通とかさー。作業中に呼び出されるんだよ。だから工場の全員に分かるんだよ。いつも羨ましがられるよ。

というセリフを何度も聞かされました。当時はそれが私への「ありがとう」なんだなと都合良く受け取っていましたが、恐らくそれは間違いで、彼はそんな自分に酔いしれていたのです。
なぜなら、そんな自分になりたかったから。同じ部屋の人たちから「毎日手紙が届くなんて愛されてますねー。いいなぁ。」と毎日言われ、彼が憧れていた[憧れられる存在]になれたのです。
だから彼はこの状態を絶対にキープしなくてはならなかったのです。

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