クソダサ名刺事件

otogroove数日前。単品用の動画も既に完成しほぼ準備は整った状態で浮足立っていた私は呑気にSNSを眺めていた。
するとある一つのことに気付く。割と名刺を準備している人が多い。

名刺なんて自分の柄じゃないなとは思っている。でも今回のイベントはあの自分の動画の内容的に現地の人に自分をアピールする方が楽しんでもらえるはず。ならば名刺交換もするべきだ。

ちゃんとした名刺の作り方はよく調べていないがおそらく今の自分には時間的にも用意することは無理。とりあえず100均で40枚入りメッセージカードを購入し手書きの名刺を作ることにした。イベント前日である。

長い間曲がりなりにも動画作者としてアレだが、私にはデザインセンスはない。
字も汚い。色ペンも用意してない。
ボールペン一本、なんの装飾もない文字のみの名刺を一枚書き上げると、それは気持ち悪いほど文字バランスの歪んだ汚い紙切れだった。
しかし、興奮気味だった私には己を律する冷静さを失いその勢いのまま40枚を書き上げることしか頭になかった。

10枚ほど書き上げたところで少し作業に慣れ始め字も整ってきた。余裕が出てきた私はこの名刺には遊び心がないと思った。今思えば遊び心もクソもない、そのダサい名刺はゴミ箱に捨てるべきだった。
名刺に書いていたのはX、ニコニコ、DiscordのIDだったがそのうちのどれかを削り一つボケをかますことにしたのだ。
おもむろにスマホからメールアプリを開き迷惑ボックスを漁った私の目に止まったのは、いかにも女性らしい文体で、「もう一度お会いしたいです。私じゃダメですか?」「エッチな写メ送っちゃいます!」などといういかにもな迷惑メールだった。

「よく来る迷惑メール」
実際に先程のメルアドを、一応コンタクトは取れないようにドメインを書かず名刺の連絡先みたいな位置づけで書いた。

あと何個かバリエーション違いを作るため違うSNSのIDを乗せる名刺も作った。そうこうするうちに残りのメッセージカードは3枚になっていた。
せっかくならボケに振り切った名刺も一枚作るか、と思った私はコツ連打らの名刺ではなく全く別人の名刺を作ることにしたのである。名刺の内容は自分の中で癖になっている芸能人「池谷直樹」と書いた名刺である。(ちなみに2018年のバトルドーム合作の自パートに使ったことがある)
一番上に池谷直樹を大きく書き、実際の池谷直樹のSNSのIDも載せた。Youtubeチャンネルもあったのでそれも載せたかったのだがIDらしきものがないため代わりにチャンネル登録者数を書いておいた。

ただこれは流石にぶっこみ過ぎだろうとまだ思うことはできたので、この名刺は今回のイベントにお世話になったowataxさんかラグマットさんに渡してちょっとした悪ふざけを笑ってもらえたらいいな程度に考えていた。
残り2枚も適当なことを書いておいた。

そしてotogrooveが始まった。

こうしたイベントは初めてだったこともあり、思っていた以上に緊張と萎縮をしてとても自分から名刺交換をできる状況になかった。
MOGRA一階の休憩できるスペースで勇気を振り絞り持ってきたオランウータンのぬいぐるみを首からぶら下げると、お一人、コツ連打らさんですか?と声をかけてくださった人がいた。そのまま流れで念願の名刺交換をすることができた。
このぬいぐるみがあれば声をかけてもらえる。流石に40枚は絶対無理にしても数枚なら渡せる状況にある。私はソワソワしていた。

そして次に声をかけてくださったのがラグマットさんだった。今回の合作について感謝を述べつつラグマットさんから名刺を頂いたので、意気揚々と用意していた”池谷直樹”名刺をラグマットさんに渡す。
「あ、これ・・・」困惑し反応に困っているラグマットさんを目の前にし、

すべった・・・


別にすべるすべらないではなく、単純に音MADらしいボケをするべきだったのだ。いやそもそもボケる必要すらない。
ただその時の私はすべった空気感に一気に顔が赤くなりパニックになりいたたまれなくなった。これがあと38枚ある。(池谷直樹は1枚だけだが)
完全に心が折れ気が動転した私は、
「あ、そうだ。名刺これだけあるんですけど、僕打ち上げ行けなくて良かったらお世話になった参加者の皆様に配っていただきたいんです」
などと早口になってまくしたて輪ゴムでくくりつけた名刺の束をラグマットさんに押し付けてしまったのだ。

ラグマットさんはなんと了承してくださって名刺を受け取った。そしてそのまま別の方に挨拶回りをしていた。ラグマットさんは自分の名刺交換をするついでに「これあちらにいらっしゃるコツ連打らさんの名刺です」と私の名刺を配ってくださっていた。名刺をもらった方はなんでラグマットさんからという疑問をおそらく抱きつつ私に挨拶をする。この一連の流れを体感した私はこのバカヤローと自分を叱責したくなった。
ラグマットさんに明らかに迷惑かかっていて、それでいてやっぱり自分で配りますとも言えずその場に立ち尽くした。

クソダサ名刺事件。ラグマットさんごめんなさい、ありがとうございました。

追記:これです

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