見出し画像

中小企業診断士受験生ものがたり 第7話 「R4年度二次試験」

R年8月。
私は一次試験を終えたその夜の自己採点で一次試験の合格を確信すると二次試験の勉強に移行した。そして、Xも二次試験一色のムードとなり、一次試験前とは様子が異なってきた。

ここで中小企業診断士試験をご存知ない方のために二次試験の概要を紹介する。二次試験は全4科目で、各科目、企業概況が書かれた問題文を読み、その内容について5問ほどの問題が与えられており100字程度の論述で解答する試験である。読解力・経営理論に関する知識・文章構成力など総合力が問われ、また模範解答が公式から発表されないので、どのような回答が評価されるか分からず対策が難しいのもこの試験の特徴である。

二次試験は10月末に行われるので、一次試験合格後だと2か月半ほどの期間しかない。私は、スタートダッシュを切るべく2月頃に二次試験対策としてEBA(通信)を取り、二次試験対策も並行で行っていた。過去勉強していた頃(H27年・H28年)は独学だったので、初めてプロの講座を取ることで二次試験の解像度が上がっていった。8月・9月と勉強をしていくと、その解像度もより高くなっていった。そして迎えた10月中旬に行われたEBAの模試では合格点を取ることができ本試験に向け順調に仕上がっていった。

そしてR4年10月30日。R4年二次試験当日となった。
私は比較的落ち着いた気持ちで二次試験の会場である武蔵大学へ向かった。

きっと今の自分なら実力を発揮できると考えていた。

だが現実は違った。

本試験中は「文章を読んでも頭に入ってこない」「何か文章を書こうとしても筆が止まる」感覚だけが異様に強く残った。ただ、それでも試験が終わった直後は「出来ないのは自分だけではない。何とか書けたかな。」と思った。しかし、数日後に、再現答案を書いた後に絶望的な気分となった。

「これは落ちる・・・」と確信に近い感覚を得た。

二次試験は一般的に、自分の感覚と点数が比例しないと言われる。よく「自分が思っていたより実際の点数が高かった」などは日常茶飯事である。だが、私は演習などで体感値と実際の点数が一致しているタイプであったので、この感覚は間違いないと思った。そして、Xをみると受験生たちが再現答案を投稿しており、自分のものと比較するとその落差に絶望感が増した。

そして、そのような思いをXに投稿すると、「コツコツさんは大丈夫でしょ」などのコメントをいただいたりしたが、私としては全く自信がもてなかった。そんな中、合格発表までの間に、先輩診断士の方や受験生たちと何度かオフ会を行い充実して過ごした。だが自分の中では常にモヤモヤした煮え切らない思いがあり二次試験を不完全燃焼で終わったことがずっと気にかかっていた。

そして12月のクリスマスの前の日曜日の昼過ぎ。そんなモヤモヤな状態で母から突然の連絡を受ける。

「父親が倒れた」という連絡であった。

母からの連絡を受け急いで病院に行くと、すでにいつもの父の姿はなく帰らぬ人となっていた。父は前日まで仕事をしていたので、この知らせは本当に突然であった。父はぶっきらぼうなタイプで私と喧嘩することも時折あったが、私の診断士受験を常に応援してくれ勉強再開した際には非常に喜んでくれた。また、父の知り合いが独立の診断士の方もおり時折話してくれたので「合格したら話を聞いておくよ。」とも話をしていた。そんな父が亡くなった。そして気持ちの整理がつかないまま母と弟と葬式を終えると、あっという間に年が越え、あれよあれよという間に合格発表の日となった。

そして、私は中小企業診断士二次筆記の3回目の不合格を経験するのであった。

(第8話へ続く)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?