【資料】蘆谷蘆村「童話研究の計画について」1921年

『童話研究』の計劃について

兒童が社會に重視せらるやうになったに伴って、兒童文學に對する世人の注意も大に進み、童話其他の兒童讀物の刊行せらるゝもの甚だ多く、我國の児童文學界が空前の盛況を呈するに至ったのは甚だ喜ばしいことであります。けれども更によく考察して見れば、この盛況は必ずしも兒童文學者や教育家の眞剣な研究と努力の結果として生れたものであるとのみいひ難く、むしろ一種の流行といふべき點もあり、隨って缺陷も發見し得らるゝのであります。かうした状態も、過渡時代の現代の現象として、或る程度までは恕すべきでありませうが、今日に於ては、我が童話界も、最早流行を追うてのみ居るべき場合でなく、眞面目な徹底的な研究の上に基礎を立てなくてはならぬ時代であると思はれます。私共は早くからかういふ研究の機関の出現を期待して居ったのでありますが、未だ何人も此の事業に取掛られたお方がありませんので微力ながら奮起して童謡研究會を起し會誌『童話研究』の發刊を計劃したのであります。幸にして我が童話文學界の諸先輩、友人諸君並に、同好諸賢の御賛助を得ましたならば、必ずや相當なる效果を擧げ、斯界の爲に多少の貢献をなし得ベきを信ずるのであります。斯の如き次第ですから、兒童を愛し、童話文學を愛好せらるゝ方に、御入會を願ひたく希望の至りであります。

童話研究會々則

一、本會は童話の研究を目的といたします。

一、本會は毎年四回機關雑誌『童話研究』を發刊し、臨時講演會を催します。

一、本會々員は左の特権があります。

(一)毎號『童話研究』の配布を受ます。

(二)本會の催す講演會に出席することが出來ます。

(三)會員の論文報告は誌上に掲載いたします。

一、本會々員は會費として毎年金貮圓を前納することゝいたします。

一、本會々員になりたい方は其住所氏名職業を明記して會費一個年分を添へ本會事務所にお申込み下さい。

  東京府下高田町雑司ヶ谷   亀原三十一番地    童話研究會

幹事

竹貫佳水  東京青山隠田四

松美佐雄  東京市外高田水久保二八

鹿島鳴秋  東京神田南甲賀町九

蘆谷蘆村  東京市外高田亀原三一

【編注】『正教時報』大正10年10月17日3面

(2021-05-04 17:59:19)

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