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手相鑑定 碌碌堂へようこそ④

第4話 冷たい手の女には仏眼相。

人は死んだらどうなるのか?
魂になって
あの世へ行くのか?
天国か地獄か。
はたまた、
この世に残って
浮遊するのか。。。

それは、
死んでからのお楽しみ。
そう受け取ると
死は苦しく辛いことばかりではなく
楽しみにも思えてくる。

なにせ、
世知辛い世の中。
あの世の方が
幾分、ましか?
不思議とそんなことを
考えてしまいます。

さて、今宵も月は
満ち欠けをやめ
夜の帳が深くなる。

新月。

すでにろくは
鑑定に入っていた。

「ろくさんは
 幽霊って信じています?」
と、綺麗なロングの髪の女性が
話しかけていた。

「幽霊ですか?
   うーん。
 私は見たことも感じたこともないので
 なんとも言えませんが、、、」
と答えるろく。

「私ね、嫌と言うほど見えるのよ。
 ほらあの人も
   向こうの木の影にいる人も。
 小さい頃から
 不思議な力があったのよね。」
女性がそう言うと

冷たい彼女の
手のひらを見ながらろくが
親指の第一関節を指差しながら
女性に話し始めた。

「ほら、ここ。 
 右手にも左手にも
 目のような形になってるでしょ?
 これ仏眼という
 特殊な手相です。
 しかも、両手にもあり
 また、親指の付け根にも
 あるんですよ。
 仏眼だらけの手相ですね。」

「えーっ?
 それってやっぱり
 霊感が強いってこと!?」
と彼女が食い気味に聞くと

「まぁ、手の真ん中に
 神秘十字線もありますからね。
 これは、御先祖があなたを
 守っていてくれているのです。」

「そうなのね。
  きっとおばあちゃんだわ。 
  時々感じるもの。」

仏眼相というものは
特殊な手相のひとつで
いわゆる 見える人に
よくある相である。

「ろくさんは
   天国って信じてる?」

「天国ですか。
   私は死んだら きっと魂になって
  空へと上がって行くんだと思うんです。 
  そこでね、雲に当たるんです。
  そして、雨になって降り注ぐ。
 そうして、新しい命を紡いでいくと
  思っていますよ。」

「と、言うことは
  この世は天国か地獄か。
  確かに、生きてるのは地獄だわ。
  鬼もいるし、神様みたいな人も
  いるしね。」

「面白いこといいますね。 
  まぁ、死は借り物の身体を返して
  修行が終わること。
  師匠がそんなこと言ってたこと
  思い出しました。」

ろくが薄い笑みを浮かべました。

「私のこの力なんとかならないかしら。  
  彼が出来ても 見られている気がして
  嫌なのよね。」

「ご希望でしたら その力封印しますよ。」

「本当に?お願いするわ。
  もう うんざりだわ。」

「わかりました。では、」

そう言うと ろくは
筆をだし 仏眼に一筋の線を
書き込みました。

「これでいいの?
  何も変わらない気がするけど。」

「大丈夫ですよ。
  これであなたの力は封じました。
  ただ、無くなったわけではないので
  またいつか、封印が解ける日がくると
  思います。」

「わかったわ。
  とりあえずこれで試してみる。
  ありがとう。」

うんうんとろくが頷いていると

「あっ!そうそう。
  ろくさんの右肩に
  遊んでほしそうな子供がいるから
  払っておいてあげるね。」
そういうと、彼女は
ろくの背中をぱっぱっと払いました。

「これでいいわ。 
  ろくさんも罪な男ね。」

ニヤッと彼女は笑いました。

ろくは
いつものように
タバコに火をつけ
ふーっとひと息。

プカッと輪っかになった
煙から キャハハハと
子供の声が聞こえた気がしました。

ろくは
「またおいで。」と呟きました。

振り返ると
不思議と彼女の姿も消えていました。

今宵は新月。
お月さんのパワーも届かぬ闇夜。

不思議な事もあるものです。


おしまい。

手相ワンポイントアドバイス

親指の第一関節が2つに分かれ上と下になっていると仏眼線。ちょっと不思議な力の線。このアドバイスは持っている人ならきっと感じてるよね。

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