再録「天野大気さんとの思い出(mixi日記05.11.05)」

 気軽に更新できるこのミクシィというのは、全く憎いヤツだ。大きな妄想を小さく切り分けて提供できる、まるで検便の容器のようなヤツだ。この清潔さに比べれば今まで私がやってきたことは、一週間も二週間も溜めに溜めた大便を苦しみ、うなりながらひねりだし、大地に湯気と悪臭をはなつそれをショベルですくい、逃げ惑う諸君の方へ向けて投げつけていたようなものだ。まァ、そっちも好みではあるんだがね。

 冒頭からビロウな出だしで、婦女子にのみ申し訳なく感じている。さて、私の交遊関係に敏感な出歯亀の諸君はすでに気づいているやも知れぬ。この度、天野大気氏と関係を結んだ。氏について不案内な向きは、私のマイミクを踏みつけるとよい。全く便利にできている。今回の登録は、私の方から申し出た。「万余の夜を経、残ったのは俺とおまえただふたり! その小鳥猊下とマイミク登録せんのかあ!?」という趣旨の内容を百倍ほどマイルドにして懇願し申し上げたのである。

 振り返れば六年前、当時俺は駆け出しのチンピラだった。きらびやかなネット上の社交界、それは俺がホームページを開く前年にその全盛期を迎えていた。いま考えれば、既得権益を守ることだけに汲々とした、没落貴族どもの集まりに過ぎなかったが、当時の俺にはそこへ招きいれてもらうことが何か崇高な目標のように感じられていた(夜の窓の外に立ち尽くすボロを着た少年のイメージ)――だが、結果は、へへッ、ご覧の通りってわけさ。いい加減、このノリはもうやめることにするが、当時のことを思い返すにつけ、あの仲良しうんこコミュニティ(スカトロ愛好地域社会という意味ではない。念為)構成員の残らずを首まで埋めて砂浜へ並べ、ワニ皮の靴の尖端で片端からその頬へ思い切り、サッカーボールにするようなトゥキックをぶち込んでやりたい――奥歯が砕け、頬の肉が内側へ裂けるそのインパクトの瞬間を巻き戻しと早送りの要領で何度も何度も繰り返して味あわせてやりたい――そう本気で思う。そして私の怒りはあの頃からまだ少しも衰えていないのであり、例の界隈に所属していた経験のある諸君は私に和解の手を差し伸べようなどとはゆめ、思わぬ方がよい。差し出した手を無言で強く引き込んで、よろめき倒れる諸君の顔面へ膝を叩き込むこと、必定だからである。おっと、今のボクはずいぶんと怖い目をしていたね! メンゴメンゴ! ネットはみんな友だちでござるよ!

 前置きが長くなるのが悪いくせだが、天野大気氏のホームページを見つけたのは、そんな折だった。毎日熱心に通いつめるファンでは無かったが、何ヶ月かに一度のぞいては、「ああ、まだいるな」とか「相変わらず巨乳が好きなのだな」とか、勝手な感想とともに、誰かが変わらずそこにいることへ安心感を抱いたものだった。食うためにする日々の労働がありながら、それとは全く関係の無い(むしろ支障のある)妄想を、誰が頼むでもないのに淡々と更新し続けるその姿に共感を覚えたのである。例の匿名巨大掲示板が誕生し、簡易更新式の日記が隆盛を誇り、照明が落ちるように次々と黎明期の個人ホームページが姿を消してゆく中で、彼だけがいつまでも留まっていた。nWoを閉鎖する機会はいくつかあった。しかし、彼のホームページを見る度に、「この人がやってるならもう少し続けるか」とここまで来てしまった側面が、多分にあるように思う。彼の方がどう感じているのかは知らない。しかし少なくとも私には、同志のように思えていのだ。今回、その「無言の連帯感」を形にすることができた。これだけで、ミクシィに来た意味はあった。

 ”関係を結んだ”の下りに肛門性愛愛好の婦女子たちがいらぬ妄想を膨らませるのではないかと煩悶しながら、記述を終える。

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