平成最後のテキストサイト100人オフ顛末書(2018.10.20)*文中リンク無しバージョン

 *前日譚と後日談はこちら

 レースのカーテンごしから注がれる暖かな午後の陽の光で目を覚ます。
 意識が覚醒し、自分がだれであるかが戻ってくるまでの、一秒にも満たない瞬間――
 その一瞬だけが、いまのわたしにとってのやすらぎだった。
 インストールされるみたいに自我がおりてきて、そして、あの日の光景がフラッシュバックする。
 やすらぎはたちまちに去り、わたしは寄る辺ない幼子のように両肩をかきいだくと、さめざめと泣いた。
 どうして、あんな場所に行こうと思ってしまったんだろう。
 あの日以来、まるで浜辺に寄せる波のように、後悔が尽きることはない。
 わたしはいけないとわかっていながら、舌でふれてしまう口内炎のように、もう幾度目だろう、あの日の記憶を反すうしはじめた……

 わたしの名まえは、琴理香(こと・りか)。どこにでもいるふつうの女の子。
 でも、わたしにはヒミツがある。小鳥猊下(ことり・げいか)ってハンドルネームで、「ねこをおこさないように」っていう名まえのちょっといけないホームページを運えいしているの。ともだちも知らない、お父さんとお母さんにも言ってない、わたしと、そしてあなただけのヒミツ。
 いま、わたしは東京にむかう新かん線にのっている。新じゅくでおこなわれる、テキストサイト100人オフ会に参かするためだ。
 ながいあいだ会っていない管り人、はじめて会う管り人、そしてなんてったってわたしのアイドル、ウガニクのホームページがやってくる!
 これからおこるだろうできごとを想ぞうするだけで、自ぜんと笑みがこぼれた。
 わたしがほほ笑むと、新かんせんの窓ガラスにうつった気もちわるいオッサンの顔も楽しそうに笑った。
 でも、ここまでくるのは本とうに大へんだった――
 わたしはかん西の中小きぎょうの営ぎょうたん当で、オフ会の当じつ、大きなプレゼンをまかされていた。でも、プレゼンが終わってすぐに出ぱつすれば、いち時かんくらいの遅こくでまにあうはず。
 鉄どう検さくで何ども「かくにん!よかった」して、一かげつまえから同りょうにおかしをくばったり、何ども何どもこの日は早たいするって、根まわしした。ブラックきぎょうのへい社では、半きゅうをとるだけでも大へんなのだ。
 でも、いちばん大へんだったのは――
 「ハア? このクソいそがしい時期に、こともあろうか私用で有給申請ってどういうこと?」
 こめかみにしっ布のカケラをはりつけたおんな上しの大ごえに、ビクッとなる。
 「あの、でも、有きゅうは理ゆうを書かなくてもいいって……労どう基じゅん法にかいて……」
 「なに、アンタ! まさか労基にでも駆けこむつもりなの!」
 おんな上しがヒステリックにさけぶ。
 「あの、そんなつもりは……」
 土よう日なのに……本とうは、休じつ出きんなのに……。しゅう職氷が期のせいで、こんなブラックきぎょうにしかじぶんのい場しょがないことに、なみだがジワッとでてきた。
 「私用とやらのせいでプレゼン失敗したら、アンタのクビくらいじゃすまないからね!」
 強れつなば倒に身がちぢんだけど、労どう基じゅん法という単ごがきいたのか、有きゅう届けはなんとか受りされた。
 当じつのプレゼンは、大せいこうだった。満じょうのはく手を受けながら、わたしははや足で会じょう出ぐちへむかう。おんな上しは出ぐちで腕ぐみして、こちらをにらみつけてきた。業むに感じょうをゆう先させるタイプで、きょうも会しゃのそん失よりも、わたしの失ぱいをねがっていたにちがいない。
 「失れいします」
 かるく会しゃくすると、小ばしりにかの女の前を通りすぎた。
 せ中にことばがとんでくる。
 「いいご身分ねえ! みんなはまだ働いてるっていうのにさあ!」
 なみだがジワッとでてきた。けれど、ふりかえらずに駅まではしった。
 電しゃを2つのりついで、新大さか駅にとう着する。駅のこう内をい動するとき、券ばい機できっぷをかうとき、何ども、何ども、うしろをふりかえった。バカげているかもしれないけど、おんな上しがわたしをつれもどすために、鬼のぎょうそうで追いかけてくるような気がして、しょうがなかった。
 発しゃのアナウンスがあって、新かん線のとびらがはい後でしまったとき、とうとう逃げきれたことに、本とうに心のそこからホッとした。このしゅん間まで、オフ会に参加できると自ぶんでもしんじていなかったみたい。
 自ゆう席の窓がわに腰をおろすと、ずいぶんかんじたことのなかった、うきうき、ワクワクする気もちが全しんをみたしているのに気づいた。ブラック労どうでよく圧されていた、心の自ゆうをとりもどせた気ぶんがした。
 どう中、ずっとそのしあわせな気ぶんはつづいた。とつ然シンナーしゅうがするとおもったら、となりの席のじょ性がネイルをはじめていたりとか、「シューマイ臭せェ」「あ、ホント……」「だれか温めるシューマイやったんじゃないのォ」「うおォン」とか、自ゆう席なので、じょう客の民どはさい悪だったけど、ぜんぶゆるせた。
 でも、新よこ浜をすぎたあたりで、ひさしぶりのオフ会だし、ちょっと身なりを気にしてみようかな……なんて思ったのがよくなかった。
 連けつ部の洗めん台で、髪の毛にディップをつけてアッパーな印しょうをつくろうとしたら、うまくいかない。何どもくりかえすうちに、顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな、絶ぼうてきなし上がりになった。
 ほどなく、乗りかえ駅の品がわにとう着し、顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたで、新かん線のかい札をでた。
 奈良の田なか者には広すぎる駅で、山手せんのホームがわからずウロウロとしばらく歩きまわるはめになった。顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたのこともあって、とおりすぎるみんながわたしを笑っているような気がして、なみだがジワッとでてきた。
 しょうがなく駅いんさんに、顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたのまま、「やまてせんはどこですか」とたずねた。そうしたら駅いんさんは、田なか者への軽べつがふくまれた表じょうで、「やまてせん? やまのてせんなら、50メートルほど行ったところですね」と答えた。
 電しゃにのったあとも、みんなが顔しゃモノのアダルトビデオで大りょうにせい液をかけられたみたいな髪がたを笑っている気がして、わたしはずっと下をむいていた。
 新じゅく駅のホームにおりると、突ぜん知らない人が、「これからどこに行くんですか?(髪の毛に精液がついていますよ)」と話しかけてきた。あれふ?みたいな、こわいしゅう教のかんゆうかもしれない。わたしは首をちぢめて、し線をあわさないようして、足ばやにその場をはなれた。
 東ぐちをでると、外はどしゃぶりの雨だった。おかげで髪の毛についたディップ(せい液)は流れおちたけど、気ぶんはもうさい悪だった。
 オフ会の会じょうダーツビー・バー? ダーツバー・ビー? バーツビー・ダー?は予そうもしてなかった、地下のお店だった。わたしは幼しょう期に段ボールで施せつのまえにおかれていたトラウマから、へい所恐ふしょうだった。
 わたしはごくりとつばをのみこむ。最しょの一だんに足をかけようとしても、黒ぐろとした四かくいやみが、段ボールの中から見あげたくもり空を思いださせて、ほんの一ぽをふみだすことができない。
 そうこうするうち、気もちが急そくにさめていくのがわかった。
 もう帰っちゃおうかな。わたしひとり来なくても、だれも気がつかないんじゃないかな。
 ううん、わたしがいたら、むしろみんな迷わくかも。
 子ども時だいの気もちがよみがえって、ジワッとなみだがでてくる。
 そのとき――
 わたしの内がわで大きなこ動がきこえた。実さいに、血のながれがはやくなって、視かいが大きくゆれた。
 だめ、パイソン、いま出てきちゃ。わたしは、琴理香としてみんなに会いたいの……!!
 ねがいもむなしく、わたしは意しきを手ばなしてしまう。

*これより先は、弊社のスタッフであるロシアクォーターの米国人パイソン・ゲイのレポートを、シリア人スタッフがアラビア語を経由して日本語に再翻訳し、それをメガネのチ……もとい、視野および垂直方向にチャレンジされているボランティアスタッフが雨だれ式のタイピングでネット用に整形したものです。一部文意の通らない部分、政治的・倫理的に不適切な部分、タイプミスおよびミススペル等がありますが、当時の瞋恚状況を考慮してそのまま掲載させていただいております。あらかじめご理解賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。Sorry, this page is Japanese only!
(切り忘れたマイクから響く怒号)いいご身分よねえ! 日本語しか話せないくせに上級市民きどりなんだからさあ!

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