アニメ「劇場版シティーハンター新宿プライベート・アイズ」感想

 懐かしのナンバーに乗せてお送りする、北条司オールスター歌舞伎。開始10分で、このあと何が起こるかすべて知ってる感じがたまりません。キャッツアイのオープニング(レオタードのけぞり)で精通を迎えた諸兄にとって、本作は鈴口から垂涎の一品でありましょう。当然ながら、性に関する昭和の奔放な価値観ーーセックスを禁じられた鬼畜王ランスーーを含めて、新規ファンの参入を完全に拒絶する仕上がりであり、いったいどこのどいつがどういう政治力を駆使して、この令和の御世にこの企画を通したのかについては、首を斜め45度に傾けて不思議がるばかりです。もちろん視聴中、小生の心の鈴口からはずっと半透明の我慢汁が垂れ流れており、狭い狭いターゲット層の内側におのれがピッタリと収まっていることを、痛いほど実感させられた次第であります。

 また同時に、後期高齢者となったオリジナル声優たちによる最後の同窓会の様相を呈しており、セリフの間合いは倍速で映画を再生するオタクになりたい若者たちにとって、おそらくピッタリの速度でした。今回はネトフリで鑑賞したのですが、声優たちの座談会が副音声で収録されているならば、改めてブルーレイ版を購入することもやぶさかではありません。しかしながら神谷明だけは、ストーリーが進むにつれて演技を35年前へとアジャストしていて、第一声に感じた猛烈な違和感は、エンディングを迎えるころには見事に消えていました。

 あと、エンディングでゲット・ワイルドとか流しておけば、かつてのオタクどもは圧倒的な読後感で名作認定するなんて思ってんじゃねえだろうな! 平成生まれどもは白けた顔でながめてやがるが、二階建てのバスは、確かに俺を追い越して行きやがったぜ……(バスタオルに顔をうずめながら)

質問:シティーハンターを見に行ったらシティーハンターが出てきた!
回答:声優陣がおじいちゃん、おばあちゃんになったことと、男性器のたかぶりを表現するためにズボンをフランクフルト状に盛り上げる演出(乳袋の文化的対偶)がオミットされたことを除けば、倫理感ノー・アップデートでそのまんまでしたね。届くべき層にのみ届いたのが、炎上しなかった理由かもしれません。

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