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松本啓子

私は昔から病弱で、長い入院を繰り返していた。不思議なもので、病気を治すために入院しているにもかかわらず、同室の子とは仲良くなる。朝から晩までどころか、24時間一緒にいるのだ

いつの間にか、私たちは親友とも呼べる存在になっていた

彼女の名は松本啓子という

夏が過ぎ、完治とまではいかないが入院してるほどでもないくらいまで快復し、1ヶ月の差もなく私たちは退院した

同じ区内の親友だったので、退院後も私たちの交流は続いた。より深くなっていたのかも知れない

けれど、5年前に彼女はいなくなった

ただひとこと

お先に

という言葉を告げて松本啓子は消えた。それ以来、私も彼女に会うことはなかった

だが数日前、見覚えのあるひとりの女が私の前に現れた。いなくなったはずの彼女だった
疲れた表情ながら、薄く微笑んでいた

私は声をかけようとしたが……
見えてしまったんだ

彼女の背後でにこり笑う顔が……

背負っていた子どもはもう3歳になっていた。松本啓子はいなくなり、岡田啓子になっていたのだった

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