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「お茶の間サイズの現代音楽史♪ 作曲家山本和智 自作を語る」

山本和智さん作曲のウワサの「糸電話」が演奏される、と聞いて馳せ参じました。
公益財団法人うらやす財団主催「現代音楽レクチャーシリーズ お茶の間サイズの現代音楽史」(全6回)の最終回。
 
楽しそうなシリーズですが、その存在を知ったのが最終回、というのが悔やまれます。
それでも、とても聞きたかった「糸電話」ならぬ、「3人の箏奏者と室内オーケストラのための『散乱系』」を体感出来て、とても楽しかったです。
 
この曲は、セッティングが観客にとっては魅力的、準備する方には大変な曲です(その様子は上記リンク先を是非ご覧ください)。

ホールに入った瞬間、舞台から客席に放射状に伸びる糸と、頭上に星のように散らばるプラコップに目を奪われます。
 
3面の箏それぞれの絃に絹糸が結ばれ、その糸が客席後方の壁まで伸びているのです。
絹糸の途中には紙コップならぬプラコップが取り付けられています。
絃の振動が絹糸に伝わり、プラコップから増幅された音がでてくる、という仕組みです。
東日本大震災後の計画停電の時に、電気を使わないで音を増幅するにはどうしたらよいのか、と考えて、糸電話の原理から編み出されたとのこと。
 
オーケストラをバックに3人の箏奏者が並びます。
箏奏者はそれぞれ、糸を結んだ箏と、結んでいない箏(一人は十七絃箏)の2面を担当し、行ったり来たりしながら演奏します。
糸を結んだ箏は生音の後、0.何秒か遅れて、頭上のコップからポコポコ音が降ってきます。
客席上にちりばめられた40個近いコップから、ポコポコ、ポコポコ。
不思議な音に包まれます。
面白い。
これは客席に座っていないと体感できない音です。
 
この曲は〈コンチェルト三部作〉の真ん中の曲とのこと。
1曲目「尺八とオーケストラのための『Roaming liquid』」
2曲目「3人の箏奏者と室内オーケストラのための『散乱系』」
3曲目「コントラバスと弦楽オーケストラのための『乱流と星月夜』」

1曲目で、液体が最後の一音で蒸発し消え去り、気化した流体が、2曲目で風に乗って散乱していく。
流体は散乱と結晶化を繰り返した後、再び結晶化し静かに降り積み、3曲目へと繋がっていく。
というイメージの曲とのことです。
せっかくの、風が舞う素敵な曲ですが、今回はビジュアルと聴き慣れない音に夢中になり、「音楽」を聴き逃してしまった感があります。
ぜひ三部作を通して、じっくり聴き直したいです。
 
この他、2曲演奏されました。
『ヴァーチャリティの平原』第1部 ⅲ-軌道A
3つのそろばんのための『オペラ』
 
そろばんの曲は、そろばんを振ったりはじいたり、こすったり。
そろばんは計算機ではなく、元々打楽器の一種だったのでは、と思うほど、多彩な音とリズムに釘付けになりました。
 
山本和智さんのレクチャーも大変面白く興味深く、とても充実したひとときでした。
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。
https://gainful-butter-9171.glideapp.io/
 
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会場 浦安市文化会館小ホール
日時 2023年10月8日(日) 14:00
講師:山本和智(作曲家)
『ヴァーチャリティの平原』第1部 ⅲ-軌道A
チェロ:北嶋愛季
3つのそろばんのための『オペラ』
西久保友広、彌永和沙、柳沢勇太
3人の箏奏者と室内オーケストラのための『散乱系』
指揮:浦部雪
箏:マクイーン時田深山、日原暢子、内藤美和
ヴァイオリン:三瀬俊吾、松岡麻衣子、中澤沙央里、白小路紗季、亀井庸州、加藤綾子、田口雅人
ヴィオラ:迫田圭、永田菫
チェロ:北嶋愛季、竹本聖子
コントラバス:篠崎和紀
フルート:内山貴博
オーボエ:大木雅人
クラリネット:西村薫
ファゴット:中田小弥香
ホルン:平本彩
トランペット:渡辺アキラ
トロンボーン:村田厚生
打楽器:西久保友広、彌永和沙、柳沢勇太
ピアノ:篠田昌伸

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