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「令和のハイカラさん 音楽Lab.羊のなる木 旗揚げ公演」

聴いて楽しく、見て楽しく、ウキウキした余韻がいつまでも続く会でした。
主催者の原島さんは、体調不良によりご出演が叶わなかったとのことですが、3名の作曲家、3名の演奏者、そしてスタッフの方々のチームワーク感が、とても心地よかったです。
 
音楽Lab.羊のなる木」さんの旗揚げ公演。
「羊のなる木」とはWikiによると「バロメッツ」という伝説の植物とのこと。
演奏を聴いた後に、バロメッツの説明を読んで、音楽Lab.のネーミングに納得すると同時に、この先、どんな活動をされて、どんなものが出てくるのか、早くも楽しみになりました。

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早めに到着してホワイエに降りると、なにやら置いてあります。
近寄ってみると、楽譜です。
よく見る縦型見開きのものではなく、A3くらいの横長のもの。
3種類あり、
一つは、印刷されたもの。奏法記号の説明や調弦も書かれています。
もう一つは、印刷されたものに、手書きの注が書き込まれています。
もう一つは、作曲者の息づかいが伝わってくるような手書き。
 
それぞれのタイトルを見て、ようやく気がつきました。
本日初演される3曲の楽譜です。
 
初演される前の、
(関係者以外)誰も聴いたことのない曲の、
楽譜です。
 
残念ながら、楽典的知識の全くない私には、それらは暗号にしか見えません。
それでも、作曲者が、その曲に対する意図や思いを、どのように書き込んで伝えようとしているのかを、音楽を聴く前に目の当たりにすることが出来て、何度も何度もページをめくってしまいました。
 
演奏の前には、作曲者ご本人の解説がありました。
楽譜を見て、解説を聞いた後での演奏は、とても分かりやすく、情景をハッキリと思い浮かべることが出来ました。
「春琴抄」の、端からはうかがい知れない、二人だけの美しい世界
「わたしは透明になりたい」の、もがきながら逃れようとしても逃れがたいバイアスの枠
「並行パラレル、視差パララックス」の、街の喧騒とざわめき。

演奏だけでなく、ステージ上の動きも見逃せません。
弦をこする時の、ハープの縦の動き、二十五絃箏の横の動き、コントラバスの前後奥行きの動き。
それぞれが対比的でありながら一体となり、世界が渦を巻いているかのように、一つの表現が産み出されます。
 
3曲終わった後の休憩時間に、再度楽譜を見ると、また発見があり、何度も音楽と楽譜を行ったり来たりしたくなります。
 
後半は、会の主催者である原島拓也さんの作品が3曲。
それぞれ演奏者の解説後、演奏されました。
原島さんの肩書きは
「“ゆめかわいい系サイコホラー”な作風の”純情系(あざとい)作曲家“」。
その名の通り、プログラムには、一見、かわいい系の曲名や解説が並んでいます。
しかし、ふわふわキラキラ感を装った曲は、聴いてみるとなかなかの重量感。
そのギャップとめくるめく対比に、興奮の渦に巻き込まれます。
 
現代音楽は、「よくわからない」とよく言われます。
私もそう思います。
でも、とても面白いです。
自分の凝り固まった、しがみついている認識が、とても些細なものに感じます。
人はもっと自由でいい。
現代音楽は、音楽の枠組みを超えた現代アート。
聴くほどにそう思うようになり、どんどん未知の世界へ足を踏み入れたくなります。
 
今日もまた、幸せな気分で家路につきました。
 
*箏の波では、演奏会情報をご案内しております。是非、生の演奏を聴いてみてください。

 
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会場 すみだトリフォニー小ホール
日時 2022年10月5日(水) 19:00
プログラム・演奏
春琴抄【新作初演】 徳武史弥作曲 
 二十五絃箏 金子展寛
 ハープ   吉田瑳矩果
 コントラバス 近藤聖也
私は透明になりたい【新作初演】 福本行太作曲
 コントラバス 近藤聖也
並行、視差(パラレル、パララックス)【新作初演】 三関健斗作曲
 二十五絃箏 金子展寛
 ハープ   吉田瑳矩果
 コントラバス 近藤聖也
幻影五色 原島拓也作曲
 二十五絃箏 金子展寛
メイクアップパレット-天華- 原島拓也作曲
 ハープ  吉田瑳矩果
東洋の夢占い師 原島拓也作曲
 二十五絃箏  金子展寛
 ハープ    吉田瑳矩果
 コントラバス 近藤聖也

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