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私のぜいたく。

ちょっと元気が出ないとき。ちょっと良いことがあったとき。
私は台所に立つ。
気分が上向きの時も下向きの時も、同じことをしている。不思議だ。

そんなことを口滑らせると「料理得意なんですか?」とか言われちゃうから人には言わない。
本当に好き勝手やってるだけなので、口が裂けても得意とは言えない。
なんというか、気分転換の儀式に近いかもしれない。
決まった手順をこなしていけば、目に見える形で結果が出るのがいい。

一番好きなのは、みじん切り。包丁で刻む音がすき。
「ザクザクザクザク」「サクサクサクサク」
包丁を通して感じる感触も、心地よい。
無心になれるか、逆に考え事が整理できたりもしてお得。
でも、やり始めると永遠に刻んでいたくなるので危険。
まな板の上にのせたものを、包丁で刻む。
時を刻むようにひたすらに刻む。

そんな私のぜいたくは、薬味を刻むこと、である。
生姜、茗荷、小葱、大葉、時々にんにく。
一人暮らしにおいて、メインの食材ではなく、引き立て役の薬味を買い揃えることがまずぜいたくな気持ちにさせてくれる。無くても生きていけるのかもしれないけど、あってほしい存在。
そして「みじん切り」の時間。様々な音と感触が楽しめる上に、香りがいい。たまらない。
彼らは別々にしてもいいし、混ぜてもいい。
混ぜるときはごま油と醤油で和えてもいい。
かさばっていた薬味たちが、小さなタッパーに収まる姿がまたいい。
刻んでよし、香りもよし、もちろん食べてよし。
冷奴にかけたり、白ご飯の上に卵黄の醤油漬けと一緒にかけて食べたり、茹でたささみと和えたり、お酢を加えて唐揚げにかけたり。
そのタッパーが冷蔵庫にあるだけで、お家に帰るのが楽しみになるので、休み明け前にやると良い。
刻んだ薬味の風味は長持ちしないのだけれど、それもまたぜいたくな気持ちにさせてくれる。

ささやかな私のぜいたく。

いただきます。


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