これから写真を学ぶ人におススメ!

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 2020年が終わろうとしている。新型コロナに翻弄された年だった。早期の鎮静化を祈りつつ、遠出するのがはばかられる年末年始、暖かい部屋で写真集を眺めながら過ごすのもいいと思う。
 感銘を受けた写真集など人に紹介したいと思いつつ、言葉が思うように出てこない。トレーニングもかねて、手元にある写真集をnoteで取り上げていきたいと思う。

 最初に取り上げるのは、『Personal Best 人生で最高の30枚撮り方レシピ』。師であるテラウチマサト先生の写真家として、そしてPHaTPHOTO写真教室、御苗場、地域創生プロジェクトなどの事業の30周年を記念した写真集。昨日届いたばかりである。

 数多ある写真から30枚を選ぶ作業は楽しかったという。この写真はどんな気持ちで撮ったか、何にこだわったかなどのエピソードは、これから写真を学ぶ私たちにいろいろなことを教えてくれる。

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 たとえば、「『絶対来る』そう思わないと奇跡は撮れない」。
 NYの街中で、ギザギザに見えるビルと抜けた空が面白いと気づく。ここまでだったら、写真好きな人ならカメラを向けるかもしれない。何かが足りないと思い、鳩が飛んでいるのに気が付き、寝転んで自分の周りにポップコーンを撒いて鳩を待って撮ったという。

 まちを盛り上げる活動のきっかけとなった桜の話も面白い。2本の川が流れ何百本もの桜が植えられているのに、当時はほとんど観光客の来なかった福島県の石川町。新聞に見開き広告で出したら、いまでは観光バスで桜見物の客が来る名所となった。写真家は写真を撮るだけでなく、地域の魅力を発見することができるという確信を持てたという。この桜から富山市、金沢市、郡山市、富士河口湖町での地域創生プロジェクトへと発展していったのかと思うと、感慨もひとしおである。

 「歴史を継承して現代を写す」「他ジャンルに学んで着想を得る」ということは、授業でも繰り返し聞いている。葛飾北斎の「富嶽三十六景」をオマージュした2作品も、風景写真家とは違う斬新な富士山の切り取りである。

 巻末には各写真の撮影年、場所、使用カメラなどデータと、経歴がある。活動が広がっていく記録と写真が撮られた年とを合わせみるのも、また一興である。

 下の写真はロンドンのセントパンクラス駅であるが、シンメトリの造形がとても美しい。GRⅢでこんな写真が撮れるのかとびっくりである。 

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 写真家はとかく、ポートレイト、風景、建築、動物など専門化してパーソナライズしていくが、テラウチ先生にはそれが当てはまらないように思う。また、代表作として若い時代の作品があげられる作家が多いなか、今が最盛期といわんばかりに次々魅力的な作品を生み出している。 

 エピローグに、ついに最後の1枚を選ぶときに、「自分の写真家人生の終わりを作っているみたい」という思いが生まれた、それで30年目のスタートとして、2020年11月に本栖湖での撮りおろしの1枚を選んだという。

 じっくり読みこむほどに現在進行形で発展していく写真家&写真事業家の歩みがわかる写真集である。ぜひ手に取って観てほしい。

 

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