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枕元のガラス玉は

2020.09.21

厚い曇り空の下で低気圧に苛まれる


「全然必要のないものなんだけれど多分、
絶対好きだから」

と、言って渡された箱は
手にずしりと、重たい。

蓋を開けるとそれは
自然界と繋がるガラス玉だった。

"ストームグラス"という名称。

✴︎

19世紀のヨーロッパで使われていた気象予報道具で、内部のいくつかの化学薬品が気温や湿度、気圧により反応を起こす、
その沈殿や浮遊の様子から気象の予測をするものなのだけれど…
実際のところ変化する理由は、
明確ではないらしい

気象学を開祖したうちのひとり、
イギリスのロバート・フィッツロイが
イタリアからイギリスへ
渡ってきたものと記しているが
発明した人もまた、明確ではないらしい

この明確でなさの隙間へ
想像が入り込んでゆく

✴︎

思わず口元がゆるむ
あまりにもよく分かられている…

もう実用のないものは増やさないと
散々口にしながらも

見渡すとわたしの部屋は
実用のないもので溢れている

朝、目覚めると
始めに目につく
枕元のガラス玉で

私は日々、
自然との繋がりを感じることができる

振り返ると私は、
こんなちいさな日常が
たまらなく好きで

今を生きるとは、
こういうちいさな幸せを拾い集めること
なのかもしれない。

「わたしはわたしの幸せをひとつひとつ、
瓶に集める」
を呟いている。

呟くと気づく、
目の前を味わえていなかったことへの反省と
今の、たった目の前を味わえるように
意識を持ってゆくことができる

素敵な言葉をみつけた

呟きながら瓶に少しずつ
幸せを詰めてゆこう

今を生きることの悦びを
忘れてしまわないようにと、ね


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