「深夜の駅」で登場人物が「幸福になる」、「アルコール」
2011.03.23 Wednesday
「僕は幸せだなあ……」
「そうですか、俺は不幸です」
歌うように呟いた上司に淡々とした声で返す。
「酷いなあ、カッコイイ僕と二人きりなのに」
「はいはい、主任はカッコイイですよ」
酒で酔っ払っている男の戯言なんてまともに聞いていられない。
適当にあしらうと、歳に似合わず子供の様に口を尖らせて拗ねた顔をする。
「課の女の子たちは、僕と二人になりたくて色々頑張ってるのに
君はこうやって僕と二人きりになれて嬉しくないのかい?」
女の子を口説くように、顔を近付けて熱いまなざしを向けてくる。
「終電前のベンチなんて状況の、どこが嬉しい要素があるんですか?」
「面白いじゃないか」
そう言うと、限界地が来たのかそのままズルズルと俺の肩に頭を乗せて
静かな寝息を立て始めてしまう。
「……まったく、人の気も知らないで」
口では文句を言いつつも、胸の中は早鐘を打つようにドクドクとすごい音を
立てているのは、アルコールのせいだけではない。
――最終電車のアナウンスが響くまで、どうかこのままで。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?