(朗読)自作詩『蛋白石のねむり』 6 杜琴乃 2021年5月3日 18:44 『蛋白石のねむり』乱雑に重ねられた手紙にぽつぽつと雨が降りはじめ境界を失くした紙片は月曜日の集積所で収集を待つ月刊誌の断面に似てくる昨夜、思い立って一括りにした恋愛ドラマは明け方の湿気を吸って鍵を失くした日記帳のように清潔だ(菫色の月光が注ぐとき蛋白石のねむりは静かに/饒舌になる)週末のラインを操る指先だけに顕れるLamé所謂、みずうみのねむる蛋白石はてらてらとして月のあかるい間に秘密を呟く誰にも触れない生まれそこなった手紙のように折り目をひろげた便箋は恥ずかしげもなく罫線を伸ばしどこまでも白くただ眩しいうたた寝をするさらさら さらさら 霧がかる湖畔を いま発ったのは誰でしょう 呼び止める隙もなく さらさら いってしまったのです 呪われた水鳥のように 静かに/饒舌に さらさら さらさらさらさら鳥たちはかつての羽の色を覚えているだろうか薄灰色の小遣いで買った安価なペンの文字は躊躇った端と端だけが嘴のように消えずにいる『もうじき真白なシャツを着ます膨らんだ胸に並ぶプラスチックの釦は手指の傷よりきっぱり赤いタイが隠して隠されているあいだだけ白蝶貝になるンです』なにもかも暴かれてしまう前に手づから傷をつけてアセトンでひたひたの毛羽立つコットンで包み(魔法を)溶かすささくれに滲みる痛みを我慢しても尚ひとつぶ残ったLaméは静かに/饒舌にてらてらとみずうみにねむる蛋白石のように慎ましく 反射する.☆.。.:.+*:゚+。 .゚・*..☆.。.:*2021年3月6日 現代詩投稿サイトB-REVIEWに投稿した作品を自ら朗読しました。B-REVIEW https://www.breview.org作品ページ https://www.breview.org/keijiban/?id=7118BGMは フリーBGM DOVA-SYNDROME(dova-s.jp)よりこおろぎさんの『プラネタリウム』を使用させていただきました。 6 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? 記事をサポート