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事物起源探究 創刊号(2010年5月)

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松永英明による個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)のウェブ復刻版です。「たいやき」「坂本龍馬伝説」「靖国神社の教義」「リフレクソロジー」「蜘蛛の糸の原典」などを扱って… もっと読む
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「靖国神社」の教義はどのようにして生まれたのか【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。 「近代」再考1 「靖国神社」の教義はどのようにして生まれたのか◎事物起源から「近代」絶対視への懐疑  私、松永は「近代」懐疑派だ。  事物起源を探っていると、どうしても日本の近代化、あるいは明治維新という時代における「断層」にぶつからざるを得ない。今、私たちが特に批判も持たずに「日本的なもの」と思っている事物の非常に多くの部分が、実は明治維新・近代化によって生まれたものであるという事実が、事物起源研究によっ

「坂本龍馬」伝説はどのように語り継がれてきたか【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。 ◎坂本龍馬のイメージNHK放送文化研究所『日本人の好きなもの――データで読む嗜好と価値観』(NHK出版生活人新書、2008)によると、好きな歴史上の人物は、織田信長(12%)、徳川家康(9%)、坂本龍馬(8%)が三傑となっている(以下、豊臣秀吉、聖徳太子、武田信玄、源義経、西郷隆盛、福沢諭吉、野口英世と続く)。私のように、日本人でいえば平将門・松永久秀・明智光秀・天海・渋沢栄一が好き、というのはどう考えても少

「事物起源」を探るということ――創刊のことば【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。  はじめまして。「文士・事物起源探究家」を肩書きとしております、本誌制作者の松永英明です。  事物起源とは、文字どおりには「モノや風習などの起源」のことを指します。これ(あるいはこのしきたり)は、いつごろ、どのように、どんな人が、どんな理由で始めたのか、ということの事実関係をじっくりと探ること。それが狭義の事物起源探究ということになります。  今、「狭義の」という言葉を使いました。それは理由があります。という

私はなぜ「事物起源探究家」を名乗るようになったのか【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。  もともと私は小さなころから、ものごとの起源を知るのが好きだった。というのは、奈良県の法隆寺のある街で生まれ育ったという環境もあるかもしれない。千数百年の歴史を有する神社やお寺が周囲にあり、しかも「かつて都が近くにあったが、とっくの昔に滅んでしまって今は単なる田舎」みたいな環境である。友達と一緒に駆け上って遊んだ小山が実は藤ノ木古墳だったというのも嘘のような実話だ。  私が住んでいたのは、住所表示変更前は斑鳩

事物起源本レビュー第一回【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。 「事物起源」そのものをタイトルとした書籍が手元にあります。「事物起源探究」のバイブルともいえる本について、今回は戦後の三冊をレビューしてみます。 速水建夫『事物起源考』魚住書店昭和八年(一九六三)二月十五日発行。このはしがきは熱く語る。  収録項目数は二四二一。日本史の用語集的な解説も多いが、「ミルクキヤラメル 大正三年四月森永太市がアメリカ見学中に学んだものにいろいろ工夫を加えて売り出したのが、はじめで

たい焼きが本当に生まれた年は?「二〇〇九年はたい焼き生誕百周年」説を徹底検証する【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。  二〇〇九年は「たい焼き生誕百周年」と報道されていた。しかし、調べてみたところ、一〇〇年以上前に鯛焼の店が存在した可能性が浮上してきた。  「生誕百周年」の根拠は、東京・麻布十番のたい焼き老舗「浪花家総本店」が創業百周年を迎えること。そのため「タイヤキ百周年」と報じられているのだが、どうやらことはそう単純にはいかない。浪花家総本店の創業に当たる明治四十一年(一九〇九年)よりも以前、明治三十九年にたい焼き店が存

「足ツボ」ことリフレクソロジーの起源は中国ではなく二十世紀アメリカだった【事物起源探究創刊号】

※松永英明個人誌『事物起源探究 創刊号』(2010年5月)より。 ■リフレクソロジーの起源を探る 二〇〇六年はじめ、私は座骨神経や大腿神経に痛みが走って困っていた。そうなると街中の「マッサージ」とか「鍼灸」といった文字に目が行ってしまう。  そんななかで、最近目立つようになったのが「英国式リフレクソロジー」など足裏系の「反射区療法」である。「反射区」というのは、足の裏か手のひらとか(実は他に耳というパターンもある)の「この部分は心臓に対応」とか「この部分は胃に対応」といった