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おかんが読むブンゲイファイトクラブG

グループFは前置きが長すぎましたね。また反物ラブレター書くところでした。ニッチモ・サッチモ会長(もちろん愛あるかぎり大好きファンクラブのだ)さんみたいに、どんな長文でも読ませる力量はないので、見栄をはらずに、ちゃっと改ページしておきます。

Fグループは異種格闘技というか、殺れれば手段は問わぬ、みたいなセレクトだったのに対し、Gグループは古武道だけを集めました、な、圧倒的文豪感。

一言でいえば、「THE 文芸」。

いや、本当に、どの話も「文の芸」って言われたら、もう「うん、うん」って自動首振りこけしになる話ばかりなのですよ。全部読み味は違うんですけど、とにかく凄いの。まさかの4本全部、何これぇ!と叫ぶ強者ばかりで、読書感想文を書きましょう、とか言われたら泣きが入る重厚さ。ファイト的横文字感がなくて、居合とか斬り合いとかですよ。直前でポップコーンぶちまけさせといて、次のマッチで物音ひとつも許しませんとか・・・なんですか、この唐突なカラーチェンジ。選者の方は、匠ですな。「タイトル名あいうえお順」という噂がありましたが、嘘でしょ?!もしそうなら、あいうえおの神(なんだそれ)は、文芸の神だな・・・。

「跳ぶ死」伊藤なむあひさん

壮大な比喩なのか、はたまたアンノウンなミギーちゃんなのか。可愛グロいとか、もうどうしたらいいの。「跳ぶ死」の死種族(?)は、BFCが生み出した奇跡の生物(死だから死物なのか…?)だと思っていて、寄生獣のミギー級の衝撃だ、読者はもうミギーを連想することなく右手を見ることができなくなるみたいに、跳ぶ死を想起することなく死を思えないよ…!もうどうしたらいいの、と慄いているのにみなさん、とってもクールに「素晴らしい描写です」「比喩が洗練されていますね」と仰ってらして、いつもながら、私だけ何を幻視してるんだろう…申し訳ないです、真剣に!真剣に読んでいるのに、作者の意図からどんどん外れるのは、何でだ…。作者の伊藤なむあひさんは、Twitterでこんなおかんがウザがらみしても、飄々と流してくださるとてもいい方なのですが、すごく好青年風なのに「死」を書く間口も広いしスタイルも様々だし、普段どんな生活をしたら、こんなに多種多様な死を書けるんだ・・・。もしかして、人間は擬態で、真なる姿は、この「跳ぶ死」なのではないですか。

あと、期間限定公開なんですが、この「来たときよりも美しく」。悍ましいものが垣間見えるのに、形容しがたく美しいの。文章も情景も。なにをどうしたらこういう角度から世の中がみえて、こういうように書けるのか、やはり正体は(ループ)。正体しりたさに、電子デビューして伊達町サーガを買い、さらなる別面をみて(以下略)魔性の物書きさんですよ・・・。

https://note.com/namuahi/n/n9bf9503d56a2


「夏の目」吉美 駿一郎さん

時代劇であるじゃないですか、ほらすごい剣豪に切られたら最初は切られたことに気づかなくて、しばらくおいてから「ぎゃーっ」ってなるやつ。吉美駿一郎さんは、そんな作家さんでですね。私、たしか初読では「すごく…すごくサイコパスです。ありがとうございました。タイトルで安心させておいて、1行目で殺りにくるとか…中身はグロなはずなのに描写は乾きぎみとか、戦上手すぎて震える・・・」とかコメントしていたくらい、なんだろう「すごいもの読んだけど(そしてグロな設定だけど)ちょっとよくわからないナー」くらいのライトな読者だったはずなんですよ。読んだ時点では。それが、何日か経過しても、魚を調理していたら「この目って最後は何がみえたのかな・・・」とか、Twitterで猛禽類が急降下する動画みたら「これじゃない、あの子が見たの?」みたいな感じで、いつまでも残ってるの。怖い。いつの間に私は斬られていたのだ。

そして、「夏の目」は見事一回戦を突破し、次作「天狗の質的研究」が上梓されてですね、ええ、それはもう「ちょ、終わるとか卑怯、私読み足りない、凄く読み足りない!」という鬼畜(ほめています)な作品で・・・ええ未読の方は読んでこの憤激を分かち合おう!ひどくないあの「最初に戻ってみよう!」な構成。何度読んでも新しい発見はあるよ、ありますけど、もっと知りたい、それは続きやろ・・・。荒ぶりをそのままTwitterに流したら(すみませんでした・・・)Mさんに「熱心なファンがついていますね」(意訳)とコメントいただき、「あ、私、ファンだったんだ・・・しかも熱心な・・・」。怖い。いつの間に私は(ループ)


「ニルヴァーナ 川柳一〇八句」川合 大祐さん

読書感想文を書け、と言われたら出題者に土下座しにいく。読み解くとっかかりはどこにあるの…。いや、本当にどうすればいいのかわからなかったんですよ。だって川柳は授業以来読んだことないのに、それが108句、もう滝のようにドーン!と頭に叩き込まれてくるの。この連続体にどう立ち向かえばいいのかわからない。開始直後に全面降伏土下座です。こんなに他の方の感想を待ち望んだ作品があっただろうか(そして原さんでまた、「ああああ・・・」ってなった)。読者のみなさん、賢いから的確なコメントを呟かれていたのですが、はるか高みからのコメントでやっぱりよくわからない・・・ずびばぜん・・・もっとこう、初心者の読み方!川柳はこう読もう!みたいなのが必要だと思います。いまも思っています!Yさんが示してくださった読み方がなければ私は溺死ですよ(観念上)
そんな川柳初心者にやさしい、川合さんTwitterを今すぐフォローして流れてくる句にうっとりするといいです。なんと写真付きで流してくれるのだ。あ、ちょっとわかった気になれました…!ときどき見つけるアニメネタにはニヤリとします。ガンダムとか。ほらちょっと親近感、まだフォローしてない方はNOTEもですね(突然の売り込み)
いや本当に。なんにもわかってない私がいうのもなんですが、川柳いいですよ。あんなに短い言葉で、心が揺らされるし、諧謔味が「構えなくていいよ」って言ってくれてる気がします。

そして、川合さんワールドで遊んだら、小説もおすすめ。文章の密度が濃い川柳の書き手さんの描く世界のなんとパワーのあることか。圧倒されました。


「パゴダの羽虫」中島 晴さん

中島さんの文章、一番好きかもしれません。
東南アジアに住んでいたことがあるのですが、雨季には濡れ、乾季には乾き、年中通して空気そのものが暑く濃く生き物の匂いがする、あの感じがある…!読んだ直後には呟かなかったけど(作品に対する評価とは違うかなと思いまして)、懐かしかったです、とても。読み返してみて、風景描写にそんなに行をさいていないのに、どうしてこんなに世界が豊かに想像できるのかが不思議。これが文章力…!

不思議なのは主人公との距離の近さでもあって、読んでいる最中に、何度も手を見てしまうのですよね。羽虫…いないよな羽虫。読んでいると手が痒くなる気もする。ひいい、リアル。これが文章力(2回目)

だからでしょうか、「ナイン、虫の穴が開くぞ」からの、持っていかれ方がすごい。とてもとても悍しくも美しい情景で、私の手の甲にも穴が空いて虫がでてきたみたいになった。たぶん、あの金箔を運んでいるのは、読者の中から中島さんに引き出されたイマジナリーな虫なんだ。私の手のどこにこんなにたくさんの虫が、と主人公はいうけど、読者もびっくりしました。私の中から虫がでてきて、物語の世界に持っていかれた気がします。