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特別な女の子であるための螺旋階段

耳に残っている言葉があるの。いつまでも、いつまでも、追いかけてくる。
誰もわたしの人生を変えることはできないんだって、わかるのに25年もかかってしまったね。

たとえば、どんな靴を履いてもいいんだってこと、だれも教えてくれなかった。ずっと、あなたに憧れていました。口にするのさえ恐ろしいほどに。あなたは海の向こうにあった。あなたとともに生きたい気持ちを認めてしまったら、その距離の遠さにわたしは絶望して命さえ絶っていたかもしれない。そう思うと、わたしが今あなたにお手紙を書けるのは、あなたが遠くで光っていてくれたからかもしれないね。

あなたは、光っていた。はるか、はるか遠くにいるのに、わたしは、あなたと、目が合ってしまった。



後ろに引っ張るものがひとつもなかった、そんな昔の憧憬なんて忘れてしまって、思い出せるのは好きだった男の子の名前くらい。

わたしがわたしとして生まれたのはいつ?
夏の、暑い日、遊ぶ友だちがいなくなった日。日がぎらぎら照って、世界中がお祭りしているみたいな気がするのに、わたしの街だけは静かだった。わたしは、かなしみと、友達になった。



わたし、バターナイフが好きよ。バターを塗るためだけにしか使えないから。
赤くて美しい傘も、銀色の美しいボールペンも。洋服もよくほめられる。
気づくのが遅いよ。やっと気がついたのね、わたしの美しい選択に。
この傘が、ペンが、服が、ここに存在するために、それがわたしの美しさとして光り出すまでに、どれだけの苦しみがあったと思う? 溺れそうだった。自分の決まりごとに。簡単に教えてなんかやらないよ。

言葉でつむがれるべき美しいことがらが、まだたくさん眠っている。
野原を駆け回るのが夢なのは、むかし野原を駆け回っていたからだよね。

好きなものに窒息しそうだよ。
どうしたらいいの? だれか助けてよ、全部忘れないでよ、

わたし、歌が好きだから、歌いたくない。
ああ、わたしが、特別な女の子だったなら。

ずっと、あなたに憧れていました。口にするのさえ恐ろしいほどに。


わたし、あなたが好きよ。
愛してないなんて、一度も言わなかったのに。
おかえりなさい。

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