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鑑賞実践講座①|ファシリテーション基礎1


鑑賞実践講座 第1回|ファシリテーション基礎1
日時|2024年7月21日(日)10:00〜17:00
会場|川崎市役所本庁舎301会議室
講師|三ツ木紀英(NPO法人芸術資源開発機構(ARDA))
内容|
・鑑賞実践講座ガイダンス
・Visual Thinking Strategiesの体験
・ファシリテーションのポイント
・ファシリテーションをやってみる


鑑賞実践講座が始まりました!

講座の導入では、これまでの基礎講座の内容から、作品を介したコミュニケーションとはどんな可能性があるかを振り返りました。具体的には、トーマス・キャンベルのスピーチ、バウンダリーオブジェクト、ミュージアムの役割など...。そしてそれらを踏まえた上で、鑑賞実践講座で取り組んでいきたい目標を共有しました。それは、

  • モノ(作品や文化資源)をまなざし、深く思考したり内省したりする=「よくみる」ことができるようになる。

  • 対話型鑑賞の意義を理解し、作品を介したコミュニケーションの場作りができるようになる。

  • 川崎市内の文化芸術資源に対し、市民が価値を紡いでいくことを実践する。

です。こと!こと?かわさきの1年目、これからことラーたちが市内で活動をしていく姿をイメージして、「モノやコトをよくみて」、「その良さや価値を見出し」、「それをまちの人々と味わい共有する」というアートコミュニケーションの第一歩を叶えていくことを目標としました。
講座の中では、実践の場として、ミューザ川崎のパブリックアートの鑑賞ツアーを予定しています。実際に鑑賞プログラムを自分たちで運営することを見据えて、実践的な内容の講座となっています。

講師の三ツ木さんは、アートとの出会いの場、作品を通して深く思考する場などをたくさん作ってきた方です。アートコミュニケータとしてどんな活動をしようか?と模索を始めたことラーたちにとって、三ツ木さんのこれまでの活動のお話は力強く背中を押してくれるようなストーリーでした。

鑑賞実践講座では、対話型鑑賞の方法としてVisual Thinking Strategies(略してVTS)をファシリテーションを軸にして学び、その考え方や手法を活用して、鑑賞の場作りを実践していきます。
VTSは、美術史や美学といった専門的な知識や情報に頼らず、作品そのものをよくみることからはじめ、1人ひとりに「これは何だろう?」と考えることを促し様々な意見を引き出しながら見方を深めていく鑑賞方法です。
講座に参加することラーのほとんどが対話型鑑賞自体が初体験とのこと。午前中はじっくりたっぷり時間をかけて、三ツ木さんのファシリテーションで作品を鑑賞することを味わいました。
ひとり、またひとりと作品をみて考えたことや想起したことを言葉にし、それをファシリテータの三ツ木さんが受け止めます。ことラーと作品の対話、ことラーと三ツ木さんの対話、鑑賞者同士であることラー間の内省的な対話が静かに、熱く深く進んでいきます。

VTSでは、最後にまとめをせずに場をむすびます。この作品は誰がどんな意図をもって制作したのか?といった「正解」のようなものを求めたくなってしまう私たちですが、VTSでは鑑賞者が主体的に考え続けることを促します。
休憩時間中に「答えが知りたい」という声もちらほらと聞こえてきましたが、講座後の振り返りシートには、三ツ木さんのファシリテーションと場に与える影響をよく観察したことから、鑑賞者が自律的に考えることの大切さを実感したというコメントが多く寄せられました。

午後は三ツ木さんのファシリテーションを観察しながら、ファシリテータはどんな意図をもってどんな振る舞いをしているのかを考えていきます。ファシリテータの実践では、ファシリテーションを見様見真似でやるだけではなく、その振る舞いが場にどのような影響を与えるか、という視点が大切になります。
ポイントとなるのは、<3つの問いかけと7つの要素>。観察とレクチャーとを行き来して、その理解を深めていきました。
この<3つの問いかけと7つの要素>は、VTSだけでなく、ことラーの活動全体に応用していける力です。いきなり全てができるようになるのは難しいことですが、できるところからことラボなどにも取り入れていってほしいなと思います。

ことラーの様子を見ながら休憩を入れるタイミングをはかっている三ツ木さんは、この講座全体でVTSをしているかのようでした。

この日の最後は、早速ファシリテーションにチャレンジ。ポイントのうち「どこからそう思ったの?」の問いとパラフレーズを心がけながら、4人1組でファシリテータを実践してみます。
難しい〜!という声もありましたが、みんな冷静に鑑賞者の言葉をよくきいて、指で指し示したり、自分のことばで確認をとったり、初めての挑戦とは思えないほどに落ち着いたファシリテーションをしていました。

終わった後には、鑑賞者と自然にやりとりをするタイミングのとり方や、鑑賞の時間のとり方、鑑賞者と一緒に作品に見入ってしまわないようにするにはどんな準備をしているのか?といった、ファシリテーションのポイントを捉えた質問があがりました。
長い時間でしたが、対話型鑑賞への理解と興味がぐっと深まった1日だったように思います。

ちなみに、鑑賞実践講座で題材として取り上げる作品は、主に川崎市市民ミュージアム、川崎市岡本太郎美術館、川崎浮世絵ギャラリーの収蔵品や関連作品を中心にしています。
講座の準備をしながら、ことラーと一緒に実物をみに行くツアーもやりたいなぁなんて思っています。

岡本太郎《森の掟》(川崎市岡本太郎美術館所蔵)を鑑賞中

講座の中ではファシリテーションにフォーカスが当たるので、どうしても「自分にできるだろうか」「難しい...」とその技術の習得に意識が向きがちになります。もちろん、自分のなりたいファシリテータ像を目指していくことも大切な学びとなりますが、「誰もが安心して参加できるアートコミュニケーションを生み出すにはVTSをどんなふうに活かしていけるか」という視点を大事にしながら講座を進めていきたいと思います。

(こと!こと?かわさきプロジェクトマネージャー 近藤乃梨子)

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