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はじめから自由だった レビュー

私の感想なんて、このアルバムを聴く人のただの数万分の一でしかなくて、でも”自称・ハンブレッダーズとともに成長してきたいちファン”として、ここに記しておきたい。
見やすいけど、その日の夜にはタイムラインの底に沈みゆく140字の手軽な愛よりも、見にくくても、でも長い時間誰にも入り込めない場所で、ひねくれた愛をこねくり回す。


「はじめから自由だった」。
はじめっていつからだろう。ずっと気になっていた。生まれたとき?自我が芽生えたとき?はじまりはそこかしこに散らばってると思うけど、制約のないはじまりは存在しない気がする。性別も親も生まれ育つ地も、決定権は自分のなかにはない。
そして自由「だった」という過去形の部分。つまりはいつからか自由でないと感じていたということである。そりゃそうだ、世の中は理不尽であふれかえっている。


それでも、この音を聴けば、確かに「はじめから自由だった」と、思える。


ドラムから軽快に幕を開ける1曲め「はじめから自由だった」。爽やかな青さのうちに不安や悲しみを吹き飛ばそうとする強がりが垣間見える。続いて「サレンダー」「ビートアディクション」と制約なんてものを感じさせずとどまることを知らないギター、それに負けることなくうねるベース、華やかに暴れるドラムが鳴る。視点は日常生活に移り、日常の自由と不自由を鮮やかに描き出す。

このあと続く5曲では、視点が「僕」と「君」に絞られる。優しい曲調が続き、先ほどの強がりから冷静になっている。個人的にハンブレの言うまたね、とは唯一「さよなら」を封印する魔法だと思っている。それがたとえまやかしだとしても、ここにいる大切な「君」を信じて、またね、を繰り返して離さない覚悟みたいなものさえ感じられる。

一度覚悟を決めたら後は動くのみ。
そう暴れ出したラストスパート、遊び心も交えつつ、最後には「ヘッドフォンをしろ!」と強く訴える。


悲しみも、不安も、すべて捨ててきた。
捨てても生まれるのが常だけれど、少なくともこのアルバムを聴いている間は、「自由」でいられるし、いろいろ屁理屈を言いたくなるけど、一部だとしても、「自由」を確かに、すでに手にしているから、もっと好きに羽ばたいていい。

この先、はじめから自由だった、とつぶやきさえすれば、お守りのようになってくれる気がする。


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