TGR札幌劇場祭2020・俳優賞選考過程における、私的上位エントリー俳優について/女性編

1.飛世早哉香さん(OrgofA 3rd.act 『異邦人の庭』)
2.大和田舞さん(ELEVEN NINES『太陽系第三惑星異常なし』)
3.さとうともこさん(トランク機械シアター『きらわれドロロンと、魔法の鏡』)

初めて審査員を経験させていただけたTGR2019に於いて、優秀賞に輝いたOrgofAさんの『Same Time,Next Year-来年の今日もまた-』。授賞式にて飛世さんは、評価をいただけて嬉しいものの、それが大賞ではないことに大変悔しがっておられました。わたくしは同じステージ上から、キレイなんだけどすげえおっかない顔で悔しがる飛世さんを(あわわわ)とビビりながら見ておりました。
そして今年、『異邦人の庭』で大賞を受賞されました。
いま配信版の同作品を視ています。飛世さん演じる火口詞葉が登場した際、カメラが押えるのは明逸人さん演じる一春の表情です。それは《火口詞葉という美しい怪物》を目の当たりにした表情だと受け止めました。
そして映される火口詞葉。現れた飛世さんは怪物でした。うっすらと笑みを湛えれば美しい女性でありながら、やはり紛うことなき怪物であり、己の中の怪物を抑えることが出来ないがために、人間として生きることを赦されない……。
わたくしは劇場にて、冒頭僅か数分で交わされる二人の演技に唸らされました。(明さんもすげえし飛世さんもすげえ。まっちぃさんの演出はどんなだったんだろう。見学したかった!)。そして観終わったあとは、昨年大賞を逃した飛世さんの悔しさを、理解し、共有したような気にさえなりました。そして作品を大賞、お二人を俳優賞へ一番に推したのでした。

大和田舞さんの一番最初の印象は、可愛らしい人。TGR2019、劇団コヨーテさん『スクランブリングヘッドウィッシュノーホエアー』での役柄もあったかもしれません。二回目のyhsさん『14歳の国』では教師役ながらなんとはなしの怪しい雰囲気。三回目、劇団コヨーテさん『君が笑えば僕も笑う』では、一人芝居のせいかそれまでとちょっと違う印象。そして今回。同じ舞台には劇団ライトマンさん『破産した男』での演技が印象深い上總真奈さん(ELEVEN NINESさん)も出ておられ、しっとりとした大人の女性らしい説得力のある上總さんの確実な演技を楽しみにしておりましたが、大和田さんがひとたびステージに姿を現すと、他の女優陣の影が薄くなったのかと感じたのでした。これはわたくしの主観でしかないのかもしれませんが、大和田舞さんがすべて持ってってしまうような気がしたのです。他の誰がセリフをしゃべっていてもそこに大和田さんがいたら大和田さんを見てしまい、大和田さんがしゃべる番は大和田さんにしか目が向かない、みたいな。
目の離せなさと注目せざるをえないことから二番目の俳優賞に推したのでした。

さとうともこさんの今回の俳優賞受賞は、クラアク芸術堂さんやポケット企画さんで培ってきたものが如何に彼女の中で大きく育っていたかを知らしめたような気がします。
トランク機械シアターさんの今作品では、さとうともこさんの二人の先輩が共演しました。縣梨恵さんと後藤カツキさんという、同劇団だけにおいてではなく、札幌、北海道演劇界を代表すると言っても過言ではないエンターテイナーです。この二人に挟まれながらも、のびのびと、そしてはつらつとした演技を見せてくれました。その姿はまさに《次世代ヒロイン》そのものでした。とはいえ、先日公演されたトランクさんの『ともだちのこえ』での縣さんと、客演ながら毎回主役級の石鉢もも子さん(ウェイビジョン)の輝きっぷりはさすがでしたので、この高い壁をぶち破るなり飛び越すなりのチカラを溜めていってほしいと願っています。
行け!次世代ヒロイン、さとうともこ!!