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ことばとき

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読み手の解釈に委ね、 梳かれた言葉ごとに読み取る詞。 捻り捩じった羅列・流れの一音、 どれだけの意味が込められるか。 心に浸透するような詩でも 世界が思い描ける小説とも遠い、…
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#散文

そのかさをとじる

 期待外れにも所持している体躯は永久に若々しく、蛤の殻を積み上げて、浜辺に打ち上げられた。ほんのささいなオケージョナル・ドレス、銀杏の季節の後ろ姿ばかりを見送っている。運悪く雨に心つくし、幸いにのまれるなら。境に圧する銀糸のあちこちを、滑らかに吹くことを憶える。  晴れ間に沈んだ色調に熟れ弾かれたように起き上がり、踵を返す黒い点がいるが。細やかな折り目節目のあたたかな存在を楽に置かず、御覧、数を減らした荷車に乗りやがる。 拾い物の坂を懐かしがる。  肌は露出しては震えてい

知恵の輪

 流れ着いたのだ。  鼻をつまむように朧月夜は繁殖して。  鄙びた下駄の音をつまみに、ひとりみにクダをまくように。躾けられたのだ! 反物の裾は永く見る影もなく。  私に着せられた装束ではないのか、これは  なまっちろい肌に血潮を浮かせた、陽炎に妬かれた、  あなたではないのか。  この言葉の海に溺れる私たち人類にとって、の秋色の病原菌はそこら中に花をまき散らすわがままは、少しづつ処理されて今に残るのは色褪せた糞と灰色の爪の垢ぐらいです。保護色に暗んだ浮遊感によろめく蜉蝣

そノかげハ天使とナリ

魔法のランプのサインを一切れ 汐のとき 伽羅の砂時計に、口の端にのせておけば、箇条書きに草は群がり栄え華々しく執行されるかもしれない……自慢話に興じるこっくりさんに従い、虫が巣食う材木を組み立てる 唇を、やはり舌先で舐める海上を照らし出す一輪のフラワーと、灰燼をかき集めた『冬』へ招待される。 踏切を映す鏡→火花散る雪→珊瑚の骨  →金縛りの半熟卵となり町に原点回帰する 、心の像。 綺羅を飾る少女漫画。      夢心地のマーメイドがするりと浮かぶ 蛍光灯から試験管まで夥し

古傷が痛むことはないでしょう

 希少性のあら捜しに仕立てさせる魅惑 やわらかに富めば、このかいな いいほうで、熱烈に繁殖した黒砂糖の鎖を断ち切る一指、こころなしか、ほのかな香りに包まれ、ほとびるは着の身着のまま。  美女と野獣の肢体、無防備な空間の情念と掴まえる、その影響は目ざといかな未詳 とにかく ほそながいサブカルチャーが 思わぬ結果ですがフィルターにあった隻腕の処遇とする。 電子烟草 無償透明 空色、天体観測  これはおおどかな砂山を与え向日葵と華やぐ手元にあり、ほど弛んだ敷物の粗戦と気軽に泣か

しあわせでありました

「弥が上にも」と蠢く弾力と渡ってうたって、ふっくらとした真綿の断層は息を切らした、奔放に惹起し、鮮烈に粋る。消え入るようなコンパスは錯覚を刻んだ犠牲者、途を記し伝わってくる、ただ頭が足りないと数字盤の目眩いを抱き蜃気楼を覗く、あじわいに石畳を漂うそよ風と響く庭へ、歩行障害の水兵は万物に春霞と昏れ 静まり返る うすい彫刻とステンドガラスの構図を取る、聡明な少年と向かっては遥か氷雨とさやぐ、てばなしの扇の儚さと護るやわらかな芽吹きであれ うまそうな獣としての幼さ、明かりが灯ったよ

住めば気狂い花の都

 たのしいおもいでも、つらいきおくも、ほろにがく反芻する。むさくるしく空虚な嘘の中心に足を運ぶ なんども。ざわつかせる世界もこの胸も、白い目で見る明けの明星の強さに趣を見つけるには。  目障りな目的地を退去させよ ただ当たり前に等しい月出したその陽よ反逆せよ。  ここは住めば都 どんな街でも、現場は水嵩近く美術館にあり、賑わいを魅せるドブ川の繁華街を吹き抜ける いわゆる寄る辺なさとして雑魚寝している。空き地における楓の二重人格の処分は ロケーションも完璧なくせに誰も振り向

会陰未満勃起縫合

 みんなみんな武装解除して贈る、過剰な油脂に禿鷹が群がるなんて簡単な点滅に従う。薄いインクに染み込んだ迷いが夜になると滑空して、盲目に等しい烏が媚びた銃口はやっぱり後ろに控えている 頑な。ナア 禁欲生活を見な。  鉛直線の切り株を思い 浮かべた金環食と手を触る ぐうたらな不注意。鉄条網なんてありふれた口調では手本にならない、奇形の逢瀬はしずくをたらす。もう小さな止まり木に飽きて、音もなく近づいて 私、感じて欲しいのです。  鈍足な戯れセラピスト、ふしだらでネガティブピアニス

迷い鳥座標軸

 冒険活劇の向こう側に落っこちたアタシ  現実に生まれたみたいね    打ち上げられた人魚たちのうたかたを知っている、しわくちゃな花々は歌い踊るような、朝靄のマンガ喫茶の寝言と微笑み。星屑は釣り下げられたレテの川でどうにか、暑さを凌ぐようにクーラーボックスの 出しどころのない手紙をひとつ 涙ボクロに換算した。上白糖の砂漠、生命線のペリカンが抱えるために、持っていたおくるみを鏡の海に落とすというみずいろの儀式に出会ったらしい。  確かに精通する『どーぶつ』と言えばほら、人に好

埋み火

不意にどこそこに現れる本音の明日、大地の子 純真で血の気のない黒い眼で抉るように仕向けられる あかい あかは、こびりついて あらってもあらってとれやしない 外すことのない よろいどを覆った 終の棲家に。idに腰を堕とした わたしたちは しあわせと寝転びました まずはわたしから 画情へとすり抜けていくノイズを与えただけの竜巻。歩兵の叫び声、無防備な起点と争点が合わさるときにアバタエクボのような片割れでは悲恋、広角を潜ませる余所者の成れの果ては紫に滲む。 挙手「弾ける素肌を

爾汝の交わり

まともなフライパンでソテーしたことがない朝のポエム  この季節、急激な増水が引き起こす、庭を徘徊する生体の、入り江における立ち話の窮屈さと同調圧力がたまらない。先頭で運転する、サイドラインから甘噛みに誘われる。一重瞼最優秀選手一匹狼、ピンク色の液体が流れる激痛に対象から順番にプログラムを重ね、亡骸通りに、並木道は耐えるべく葉先手足を毟っていく。  訳なく逞しく転がされたキッチンタイマーは舌を巻き、あわてんぼうの浪人生を演じているかのようにけたたましく、丸儲けな保身術が染みつ