海岸の古びた一軒家でソリッドな食事をし煙草をすわない

画像1

■ サーフシティ・ロマンス --- 片岡義男 --- 晶文社/1981

 このタイトルが、センチメンタル・シティ・ロマンスという日本のロックバンドから引用されたことを知っている人は、もうそんなに多くないかもしれない。

「宝島」や「ポパイ」で、片岡義男が語ったサーフィン。

 イマジネーション、が片岡義男のサーフィンの源泉だ。
波をうまくつかまえた瞬間の、海の波というもののすさまじいエネルギーを、自分が乗っているサーフボードの下に感じる。
明るい陽の降り注ぐ真っ青な空にむけて、波は自分をほうりあげてくれる。サーフボードを、そして自分を、下から持ちあげる波の力が、ボードから両脚に伝わり、背骨から頭に抜けていき、空の中へ散っていく。
その瞬間には、すべてのものが見える。

サーフィンは単なるアウトドア・スポーツではない。ウェイ・オブ・ライフなのだ」とか、「サーフィンはトータルなライフ・スタイルだ」と、アメリカ製のサーフィン映画のなかでナレーターがいつもくりかえしている。
そのとおりだ。サーフボードに乗って、一度でもいいから波をつかまえ、すべりおりた経験を持ってしまったら、サーフィンの魅力に完全にひっかかってしまい、以後、サーフィンは、ウェイ・オブ・ライフにならざるをえない。

こんなことを、「まだ沖に出ている夕陽のサーファー」とか「海岸の古びた一軒家でソリッドな食事をし煙草をすわない」なんていうタイトルで書かれてしまったら、参りましたというしかありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?